6月17日。ホームレス支援NGO「TENOHASI」と「世界の医療団」が協働で行う「夜回り」に本誌記者が同行した。路上生活者におにぎりを配りながら安否を確認する活動で、池袋駅東口にある公園が出発地だ。この協働プロジェクトの代表医師の森川すいめいさんが、歩きながら説明してくれた。
「労働構造や時代の変化とともに、この辺りの様子も変わりました。前は肉体労働者から野宿者へというケースがほとんどでしたが、今は失業した会社員やネットカフェから流れた人もいますね。高齢になって初めて野宿する人もいます」
池袋駅構内に、ジャンパー姿の初老男性が立っていた。
「お体、いかがですか?」
森川さんが健康状態を尋ねると、「駅の階段で転んで、指が痛む」と男性が答えた。
「いま66歳だけどさ、こういう経験は初めてでね」
最近ホームレスになったというその男性はそう言い残し、駅構内に消えていった。