――その事務所には長くいたのですか。
2カ月で40万しかもらえなかったので、違うグループに移りました。ただ、どう頑張っても月30万ほどしかもらえない。リスクに見合わないと言っても、「今は経費がかかるから」「表の会社を作ったら取締役にしてやるから」と理由をつけては流されました。そこには半年くらいいて、それから闇金にシフトしました。
ただ、闇金の仕事は性に合わなかった。督促の電話をかけるときには、舌をまくらせて吠える(怒鳴る)必要があるのですが、それをしたくなかった。普通にお金を借りている人をだまして闇金に落とすというのも嫌で、この仕事を「辞める」と伝えました。
めくれないと詐欺じゃない
――スムーズに辞められましたか。
引き留められはしましたが、バックをちらつかされることはありませんでした。25、26歳のときです。
――犯罪から足を洗った。
はい。闇金をやめてからは、もう一度芸能の仕事を目指しました。当時同棲していた恋人がいて、結婚することになりました。ただ、芸能の仕事では食べていくことはできないし、昼間もしっかり働こうと考えていたとき、知人から昼の仕事の紹介を受けました。
――仕事内容は。
未公開株の販売業です。
――未公開株の販売ができるのは、その未公開株の発行会社や登録を受けた証券会社に限られています。
犯罪にあたらないか確認しましたが、事務所を借りて所在も明らかにするし、投資事業組合を作ると言われました。なら大丈夫かなと。2カ月で月収が120万円を超えましたが、だんだんグレーだと感じ始めました。
――具体的には。
未公開株の販売だけだと思っていましたが、「株を買いたい人がいる」とうたっていた相手が実は身内だったんです。マッチポンプのような手法で、本当は買いたい人なんて存在しない。めくれない(バレない)と詐欺じゃない。それでも32歳くらいまで続けていました。
――やめるきっかけは?
本当にやりたいことじゃないなと思ったんです。若いころ、よく海外に行っていたこともあり、役者がダメなら輸出入の仕事がしたかった。それで、実際に韓国で雑貨を買い付けてネットで販売することにしたんです。
ただ、売り上げは月に40万ほど。仕入れを引くと、お金はほとんど残らない。生活が圧迫され、どうしようと思ったときに未公開株の販売を誘ってきた知人から再び連絡がきました。
――今度は何の誘いでしたか。
老人ホームの入居権の販売マニュアルがあるから、やってみないかと連絡がありました。やり方は未公開株のときと同じで、本当は入りたい人なんていない。でも、あたかもいるかのようにみせて、権利を販売する。お金に困っていたので、手を出してしまいました。