「闇バイトは切り捨て」だと話すフナイムさん。自身が特殊詐欺の主犯格だった頃、現金を受け取る「受け子」と直接会うことはなかったという
「闇バイトは切り捨て」だと話すフナイムさん。自身が特殊詐欺の主犯格だった頃、現金を受け取る「受け子」と直接会うことはなかったという
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  警察官に取り囲まれた日のことをよく覚えている。

【写真】端から端までビッシリ…フナイムさんが服役中に書きためた「獄中ノート」はこちら

「やっと終わったな」

 特殊詐欺事件の主犯として活動していた男性(42)は安堵した。

 23歳で“闇バイト”の世界に足を踏み入れ、詐欺行為を繰り返した。当初は「使われる側」だったが、いつの間にか「使う側」になっていた。35歳のとき、高齢者から金をだまし取ったとして、逮捕された。懲役5年4カ月の実刑判決を受けた。

 服役中、妻からは手紙で離婚を言い渡された。2021年に刑期を終えたが、妻と子どもには今も会えていない。

 出所後は、刑務所で呼ばれていた番号「2716」から、自らを「フナイム」と名乗り、その経験を語っている。「犯罪者」が口を開くことで、批判にさらされることもある。それでも発信を続けるのは、次の加害者を生みたくないからだという。

 なぜ、闇バイトに手を出したのか。詐欺だと気づいても、なぜやめられなかったのか――。150分間にわたって、アエラの取材に応じた。

*  *  *

――闇バイトに手を出したのは。

 俳優を目指しながら、水商売の仕事で生計を立てていました。あるとき、客の男性から「もっと稼げる昼のバイトがある」と誘われ、事務所についていった。それが「闇バイト」でした。

――どんなことをしましたか。

 お金を必要としている人に融資をうたい、保証金を受け取る「融資保証金詐欺」です。最初は合法だと聞かされていました。研修を始めて2週間くらいして、詐欺なんじゃないかと思い始めました。

――詐欺だと気づいてもやめようと思わなかったのですか。

 身分証のコピーを取られていましたし、暴力団の影もちらつかせてきました。飲みの場では「〇〇組の人がこういうことを言っていて」とあたかも付き合いがあるかのように話す。一度、屋形船の飲み会に参加したときは、暴力団の集まりなのか、指を詰めた人もいました。東京湾の花火の日だったかな。それに、お金の魔力にも取りつかれていました。

――すでにたくさんお金を得ていたのですか。

 月50万~100万は稼げると言われて始めましたが、実際に受け取っていたのは月20万ほどでした。でも、研修先の従業員が毎月200万~300万円を現金で受け取る姿を間近で見て、自分もああなりたいと思った。

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「表の会社を作ったら取締役にしてやる」