たとえば、日本一の農業地帯である北海道では、組合員の約8割が准組合員。自治体の面積が広い北海道では、金融機関やガソリンスタンドなどの地域インフラを農協が支えていて、それを利用するために多くの方が准組合員になっています。かつて農業を営んでいて、離農した人も多い。

 それを全国一律に、准組合員の事業利用を正組合員の2分の1以下にするという規制改革会議の案が通れば、日本の農村が、国全体が壊れてしまう。政治は、人々の生活を安定させることが第一です。それに反するような提案は、私たちは受け入れることができませんでした。

 人口減少時代に入ったなか、おそらく農林中央金庫が保有する90兆円の資産が、民間金融機関の新しいマーケットになるとの考え方があったのでしょう。

 この資産は組合員の汗の結晶です。それが、大きくなりすぎたから准組合員の利用を減らして小さくせよというのは、どういうことなのでしょうか。この資産は、農村部のライフラインの一翼を担っていると自負しています。規制改革会議の提言は、それらを「すべて解体せよ」と言っているかのようでした。

――准組合員の利用制限は、農村地域の生活者に悪い影響を与える。結果として「5年後に再検討」という形で先送りになった。その代わりに受け入れたのが、全中が持つ指導・監査権限をなくすことなどだった。

週刊朝日 2015年5月1日号より抜粋