
本誌は先週4月3日号で東京大学・京都大学などの合格者高校ランキングを掲載したが、東大と京大の上位校を見比べるとあることに気付く。東大はほとんどが私立・国立の中高一貫校。対する京大は過半数が県立・府立などの公立高校なのだ。その裏にある“事情”を探った。
各高校で、オリエンテーションで京大へ連れていくなど学校の雰囲気に触れる機会を作ったりしているが、大学側の新しい取り組みも功を奏しているといえるだろう。京大は12年に大阪府の進学指導特色校10校と、翌13年には滋賀県の県立11校と連携指定校協定を結んだ。北野や天王寺との密接な関係に見られるように、高校生が京大の研究室を訪ねたり、教授が高校へ行ったりする機会が増えているという。
志望者が増えないと、合格者も増えない。公立トップ校の生徒たちにとって、京大が「身近な存在」になったことが、躍進の一因になっているかもしれない。
また、関西ならではの事情がある、という見方もある。大学通信・常務取締役の安田賢治さんはこう話す。
「京大入試で関西の公立校が目立つのは、はっきり言うと東大があるからです。灘、西大和学園、東大寺学園、甲陽学院など、関西の名門私立は東大志向が強い。彼らが東大に流れるので、相対的に京大に手を出しやすくなる側面もあります」
さらに、西日本の医学部志向の強さが拍車をかけたともいう。日能研関西・進学情報室の森永直樹室長はこう話す。
「西日本は地元への帰属意識が強く、中高一貫の私立には医者の子どもも多い。だから医学部志向になるんです。医者なら地元に戻って働けますから」
私立のトップ進学校の生徒たちは東大か、医学部医学科へ、という流れがあるというのだ。
京大の問題がやさしくなった、という指摘もある。
「ゆとり教育になった00年ごろから以前より解きやすい問題が増え、公立校の合格者、特に女子が増えた印象があります」
そう話すのは甲陽学院進学資料室の杉山恭史さん。もともと大阪は公立が強い傾向もあるという。
「昔から成績優秀者が公立進学校に進んでいます。特に11年の進学指導特色校が始まってからは実績がよくなってきている」(同)
大学通信・常務取締役の安田賢治さんも、進学指導特色校での文理学科の新設の影響が今後さらに出てくると言う。
「京大は理系の定員が多いので、合格者数は理系が鍵を握っています。すると、府内全域から優秀な生徒が集まる文理学科がポイントになる。予備校関係者の中では、『公立トップの北野一極集中が進むのでは』と言われています」
関西圏では首都圏とは違う事情で、受験勢力図が動いていた。
※週刊朝日 2015年4月10日号より抜粋