明治政府は不平等な条約を改正するのに苦労しました。誰がそんな条約を結んだかというと、そもそもの端緒は直弼だった。しかも天皇の許しも待たなかった、ということで、直弼は批判されました。吉田松陰を処刑された長州の人たちが、政府の要職に多かったことも関係していたでしょう。江戸時代の政治体制では、必ずしも天皇の許しが必要なわけではないでしょうし、開国路線ということでは間違ってなかったんですけどねえ……。

 皇国史観が支配的だった戦前には、直弼は極悪人のように言われていたようです。そんなイメージが大きく変わったのは、直弼の生涯を等身大に描いたNHK大河ドラマ「花の生涯」(63年)からだと思います。原作になった舟橋聖一さんの小説は、52年から毎日新聞に連載していましたが、なんといっても大河ドラマの影響は大きい。

 放送された翌年には「花の生涯」ブームが起こって、彦根城に120万人もの観光客が訪れました。近年の多いときでも80万人台。ひこにゃんブームにも記録は破られていません(笑)。

 最近では、大河ドラマ「篤姫(あつひめ)」や映画「柘榴坂(ざくろざか)の仇討(あだうち)」の直弼が人間味豊かに描かれていたように思います。今年の大河ドラマ「花燃ゆ」では、どんな直弼が登場するのか楽しみです。

 まあ、吉田松陰の妹さんが主人公ですから、敵役として描かれるのでしょう。重厚な演技をされる高橋英樹さんが演じられるので、迫力のある憎まれ役ぶりかもしれませんね(笑)。

(構成 本誌・横山 健)

週刊朝日 2015年2月13日号