思春期の女性に多い病気というイメージが強いが、近年、その裾野は広い年代に広がりつつある「摂食障害(せっしょくしょうがい)」。

この病気はおもに、(1)食事を受け付けない、または自ら嘔吐したり下剤を乱用したりして体重の増加を防いで極端に痩せている「神経性やせ症(拒食症)」、(2)体重は正常だが過食をしながらも体重を減らそうとして嘔吐などをする「神経性過食症」、(3)いずれにも分類されない「特定不能」の、大まかに三つに分けられる。患者は女性がほとんどで、90%以上とも言われている。診断は、低体重や、食後に下剤の乱用や嘔吐があるか、体重の増加に強い恐怖を感じているか、などを元に総合的に判断する。

 患者数は、1998年に医療施設を対象にした疫学調査で約2万3千人と推計されたものの、はっきりと特定できていない。その理由として、本人や家族が病気に気付かないほか、医師さえも気付かずに見過ごされるケースがあるからだ。

「摂食障害は、原因が多様なため、科学的根拠に基づいた標準治療がない疾患です。そのため、医師の中でも認知度が低く、専門性が高い医師でないと診断しづらいところがあります」(東京大学病院・心療内科科長の吉内一浩医師)

 低血糖の原因を医師から「甲状腺の異常」と指摘されるなど、的確な診断がされないことも少なくない。

「低体重になると、体がなるべく代謝を落とそうと機能することから、甲状腺ホルモンの数値が低くなります。ホルモンの数値から甲状腺の異常と診断され、甲状腺ホルモン薬をもらうと、余計に体重が減ってしまい、さらに悪化する危険性もあります」(同)

 日本摂食障害学会理事長で浪速生野病院の切池信夫医師によると、メーンとなる治療法は、心理面から治療する精神療法と、薬物投与といった身体療法の二つがある。精神療法は、体重についての誤った認識など、認知のゆがみを修正し、適切な食事量をとるよう改善するなどの「認知行動療法」のほか、「集団精神療法」や「対人関係療法」、家族を対象にした「家族療法」など幅広い。こういった複数の治療法を、患者の状況に応じて組み合わせていく。

「きれいになりたいという美容的願望のほか、両親の不仲や、勉強がうまくいかない、理想に現実が追いつかないなど課題を解決できないことが病気の背景にあります。そのため、治療の際は、食事指導し、過食などが生じたきっかけなどを書いてもらい、抱えている問題を一人ひとり探っていきます」(切池医師)

週刊朝日  2014年9月12日号より抜粋