プロゴルファーの丸山茂樹氏は、プロの世界でのゴルファーとコーチの良好な関係についてこういう。
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タイガー・ウッズ(38)がホームページ上で、プロコーチのショーン・フォーリー氏との契約を解消した、と発表しました。
タイガーにとって3人目のコーチで、2010年8月に契約したんですね。タイガーと詳しく話したわけじゃないんですけど、今回の契約解消は、いい選択なんじゃないかと思います。
僕は最初から、タイガーのスイングはフォーリー氏の理論の対象外じゃないかと思ってたんです。もともとタイガーのスイングの特徴ってのは「2軸」といって、簡単に言うと、体重を右に移動させて、最後に左へ戻すというものだった。いまはほとんど体重移動をせずに打つ「1軸」になっています。
だから、「2軸」に戻すのかどうかは分かりませんけど、違う方向に向かっていくんじゃないでしょうか。今後が楽しみですね。
プロゴルファーにはいろんなタイプがいますけど、僕は完全にフィーリング派。プロコーチというのは、メカニズムにものすごく長(た)けてるわけです。「ダウンスイングでこの形になったら、こういうインパクトにつながるよ」と言えるんです。言ってみれば大学教授に数学や化学を習ってるようなもの。そこで「いや、僕は違う解き方ができるよ」と言うのが我々なんです。
フィーリングをもとに実験してみて、「これとこれを足したら、新しい元素ができたよ」と。それがプロゴルファーだと思うんです。そのとき、なぜ新しい元素ができたのかを説明してくれるのが、コーチです。こういうやりとりを繰り返して、ある程度おなかいっぱいになっちゃうと、もう基本的には話し相手という関係になりますね。
僕は01年から7年間、同い年の内藤雄士にプロコーチとして支えてもらい、米PGAツアーで3勝することができました。雄士からメカニズムについての知識を吸収して、かなりプレーに生かせました。
一方でジュニア時代のコーチだった父は、完全にフィーリング派でした。「もっと振った方がいい」「そこはもうちょっと気持ちよくいけ」と。気持ちを盛り上げてくれるんですね。もちろん、基本はしっかり教えてくれた上でね。
メカニズムばっかりのコーチだと、選手が行き詰まってくると、一緒に行き詰まってしまう。メカニズムとフィーリングの両面を持ったコーチが最高なんですけど、なかなかいないんですね。
プロゴルファーにとって一番ありがたいのは「一番いいときの動きと比べて、いまは○○が違うよ」って指摘してくれるコーチです。実はあまりいないんです。当然、プロよりコーチの方がゴルフの技術が低いから、なかなか断言できない。断言できないなら、映像に残しておいて、タイミングがワンテンポ遅いだとか、切り返しでこうなってるだとか、実証してくれればいいんですけどね。
雄士は「最近はドライバーとアイアンのスイングは別物だって考え方が出回っててね」なんて話をしてくれた。それで「ああ、俺の感じてたことは間違いじゃなかったんだ」と気づけたこともありましたね。そういう会話のできる関係って、すごく大事なんです。
※週刊朝日 2014年9月12日号

