前作の人気を上回り、高視聴率のドラマ『続・最後から二番目の恋』(フジテレビ)。ドラマ評論家の成馬零一氏がその魅力を分析する。
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5月に入り、春のドラマも出揃いましたが、なんといっても一番のオススメは、フジテレビ系で木曜22時に放送している『続・最後から二番目の恋』です。本作は2012年に放送された『最後から二番目の恋』の続編。鎌倉を舞台に、JMTテレビに勤める48歳の吉野千明(小泉今日子)と、市役所に勤める52歳の長倉和平(中井貴一)を中心とする長倉家の人々を主人公とした大人のドラマです。
脚本は朝ドラの『ちゅらさん』や『おひさま』を筆頭に様々なドラマを手がけてきた岡田惠和。チーフ演出は、坂元裕二・脚本の『それでも、生きてゆく』や『最高の離婚』といった話題作に関わっている宮本理江子。会話劇に定評のある岡田の脚本を、長回しを多用した映像で芝居をじっくり見せていく宮本の演出は実に巧みで、鎌倉という時間の流れがゆったりとした場所で、延々と繰り返されるおしゃべりが実に心地よくて、やみつきになります。
普段は大人として立派に仕事をこなしながらも老いていくことの切なさを抱えた和平と千明が時折みせる青臭い姿は実に愛おしいもの。いまや超高齢社会となった日本において、どう年を重ねていくのかというのは多くの人にとって大きな関心事ですが、「いい年して、何やってるんだ」という恥じらいや戸惑いがあるからこそ、彼らの恋や仕事が魅力的に映るのだと本作は教えてくれます。しかも、その姿は気取ったところはまったくなくて、例えば、和平が週刊誌の「50代からのSEX特集」を読んでいたと家族に疑われてうろたえる姿は、まるで思春期の中学生のようで、とてもチャーミングで笑えます。
また、千明がドラマ制作に関わっているためか、テレビドラマにまつわる話が多いのも隠れた魅力。今回は、千明の元恋人の高山涼太(加瀬亮)が登場するのですが、第2話では、涼太が脚本家でJMTテレビの主催するシナリオ新人コンテストの第1回大賞の受賞者であることが判明します。おそらく、彼のモデルはフジテレビが主催するヤングシナリオ大賞の第1回受賞者の坂元裕二ではないかと思うのですが、今後は、劇中歌の「T字路」の作詞作曲を担当した歌手の横山剣や女優の尾野真千子が本人役で登場することが予定されており、テレビドラマの虚実を横断する偽史的な世界観となりそうです。
ちなみに、初回の平均視聴率は14.0%(関東地区)。前作の全話の平均視聴率が12.4%(同)だったことを考えると大きく上昇しています。これは視聴者に『最後から~』という作品の世界観が、登場人物の関係性も含めて浸透した結果でしょう。逆にいうと1クール(3カ月)では、自己紹介ぐらいが限界なのかもしれません。テレビ朝日系の刑事ドラマはそのことに自覚的で、積極的に続編を制作することで、視聴者と作品の関係を作り上げてきました。『リーガルハイ』等、近年のフジテレビが続編づくりに積極的なのは、中々ヒット作が生まれない中での苦肉の策という側面はいなめないのですが、結果的に、登場人物といっしょに視聴者が年を重ねていくというテレビドラマの魅力が活かせるという意味では大歓迎です。『最後から~』も、『北の国から』や『渡る世間は鬼ばかり』のような長寿ドラマとなって10~20年と続いてほしいものです。
※週刊朝日 2014年5月23日号