お酒をほとんど飲まないのに脂肪肝になり、肝硬変や肝がんに進行する「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」が増えている。
東京都在住の会社員、石川陽一さん(仮名・45歳)は数年前、近くの内科医院で糖尿病と診断され、血糖を下げる薬を飲み始めた。糖尿病の症状は安定していたが、2011年、定期検診で肝臓の異常を指摘された。翌12年6月の検診でさらに数値が悪くなったため、肝臓病の専門外来がある麻布医院を受診した。同院院長の高橋弘医師はこう話す。
「飲酒の習慣がない石川さんは、肝臓が悪くなる理由が思い当たらず、糖尿病の薬が原因ではないかと相談に来られました」
血液検査とエコー検査の結果、脂肪肝の一つである「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」と診断された。脂肪肝とは、肝臓の細胞の5%以上に脂肪のかたまりが沈着した状態をいう。
最近、お酒をまったく飲まない、あるいは飲んだとしても1日に日本酒1合程度で脂肪肝になる人が増えている。これを「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」という。内臓脂肪型肥満、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などを背景に発症するメタボ型の脂肪肝である。
NAFLD(ナッフルディー)の8割は、「単純性脂肪肝」といって、進行の恐れがない良性の脂肪肝だ。残り2割がNASHに進む。
NASH は、炎症や線維化(肝臓が硬く変質する)をともなう進行性の脂肪肝だ。約10年で3割前後が肝硬変、肝がんに進む。過度の飲酒がなくても、生活習慣病から肝がんになるケースがあるというわけだ。
診断は、CT(コンピューター断層撮影)やエコー検査で脂肪肝の有無を調べる。血液検査では、肝臓の組織が壊れると値が高くなるAST、ALT、γ-GTP、線維化の程度を示す線維化マーカーと血小板数のほか、肝臓の鉄貯蔵量を示す「フェリチン」、空腹時の血中インスリンなどを調べる。
これらが異常値を示した場合、NASHの可能性が高くなる。ただし、確定診断には、直接肝臓の組織を採取して調べる「肝生検」が必須になる。
「患者さんの多くは、入院が必要な肝生検を敬遠します。重篤なケースを除き、血液検査と画像検査で診断をつけます」(高橋医師)
※週刊朝日 2014年4月4日号