かつては政財界は言うに及ばず、芥川賞作家やプロの囲碁棋士ら多彩な人材を世に送り出してきた東京大学法学部。しかし、同学部の“入り口”である文Iの志願者は減少しており、学部の「就職力」を詳しくみると、日本一のエリート学部が、意外に就職活動では強さを発揮できていない。
本誌2月21日号に掲載した、有名企業への大学別の就職状況をまとめた「著名400社就職率ランキング」(大学通信調べ)でも、東大は18位だった。これは法学部だけの順位ではないが、東大の「就職力」が決して高くないことがわかる。
大学通信の安田賢治・常務取締役が言う。
「意外に思われるかもしれませんが、東大法学部は就職に強くないのです。法学部への入り口となる文Iが文系における日本最難関の入試なのは間違いありませんが、受験勉強で大変な負担を強いられる割に、その努力に見合う就職状況とはいえないでしょう」
この「就職力」の弱さを「相当数の受験生や保護者が把握している」ことが、志願者減につながったのではないかと安田氏は言う。
「以前なら文Iに挑戦していたはずの受験生でも、一部は地元の医学部や工学部を目指すようになりました。文系で東大志望であっても、就職を考えて文II(主に経済学部)に流れるケースもあります」
実際に民間就職に挑んだ学生はどうだったのだろうか。法学部から大学院に進み、今春にメガバンクに就職する男子学生は「法学部は試験の負担が大きすぎます」と漏らす。
「授業は大教室で先生が一方的に話すことも多く、聞き取りにくいためICレコーダーに録音して文字起こしします。リポート試験はゼロ。すべてテストなので本当に厳しい。3年の後期試験は完全に就活時期と重なるので、就活が二の次になる。つまり、公務員試験や司法試験を目指すカリキュラムのままで、民間への就活に対応できていないんです」
※週刊朝日 2014年3月21日号