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競技の発祥地である欧米諸国を抑え、いまやフィギュア大国となった日本。初めて五輪の金メダルを獲得した日本男子の歴史を振り返ると、各年代に登場した名選手が世界との差を縮めてきたのがわかる。
最初に世界の壁をぶち破ったのは、現在はコーチ、解説者として活躍する佐野稔(58)だ。1977年に日本選手として初めて、世界選手権(東京)でメダル(銅)を獲得した。
同大会では、5種類の3回転ジャンプを完璧に跳び、「ブダペストの心」で演じたフリーは1位に。オールラウンダーとして名をとどろかせた。まだ3回転半(トリプルアクセル)を跳べる選手がいなかった時代。佐野の技術は高いレベルで安定していて、世界でもピカイチの存在だった。同大会を最後に競技生活を引退した佐野。翌78年、カナダの男子選手が初めてトリプルアクセルを成功させた。
日本男子を「飛躍」させたのは、98年の世界選手権の予選で4回転ジャンプを成功させた本田武史(32)だ。日本人初の快挙だった。本田は2002、03年の世界選手権で2大会連続の銅メダルを獲得。03年の四大陸選手権のフリーでは、2種類の4回転を3度決める「神業」をみせた。
もちろん、ソチ五輪6位の高橋大輔(27)も、大きな功績を残したひとりだ。
なんと言っても10年のバンクーバー五輪。4回転ジャンプには失敗したものの、華麗なステップで観客を魅了し、日本男子初のメダル(銅)を獲得。また、同年の世界選手権では、スピンやステップすべてで「レベル4」を獲得。ショートプログラム、フリーともに1位となった。高橋にとって、悲願の世界トップに立った瞬間だった。
先達たちの節目節目での大きな功績が、羽生結弦(はにゅうゆづる)の偉業につながったのだ。
※週刊朝日 2014年2月28日号
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