米国の女優、アンジェリーナ・ジョリーさん(38)が受けたことで知られるようになったのが、乳房の予防切除だ。

 報道後、聖路加国際病院ブレストセンター長の山内英子医師は多くの問い合わせを受けたという。

「そのなかには、『家族や親戚に乳がんの人が多いので予防切除したい』と話すなど、乳がんと遺伝について誤解している人もいました」

 乳がんでは、家系内に乳がん・卵巣がんを発症した人が複数いる「家族性乳がん」が、全体の15~20%を占める。そのなかに、特定の遺伝子変異を親から受け継いだ「遺伝性乳がん」があり、これが乳がん全体の5~10%程度と推察されている。

 原因遺伝子の代表がBRCA1とBRCA2だ。これらの遺伝子に変異があると乳がんと卵巣がんになりやすく、「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」と呼ばれる。遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の人は、一般の人と比べ、70歳までに乳がんにかかる確率が10~19倍、また生涯に卵巣がんにかかる確率は15~40倍と、はるかに高い。

 遺伝子検査は、遺伝カウンセリングが受けられる施設で実施している。

「検査やカウンセリングには健康保険が利かず、検査は約25万円、カウンセリングは1回1万数千円程度かかります。また、家系に関わる検査なので、結果が陽性だった場合は影響が大きくなります。まずカウンセリングを受けてから、検査するかどうか検討してください」(山内医師)

 検査結果が陽性なら、若いうちから乳がん検診を通常より頻繁に受け、早期発見に努めることが大事だ。それに加えて検討される予防的治療の一つが、リスク低減手術、いわゆる予防切除だ。手術は通常の乳房全摘手術で、術後に乳房を再建する。

 聖路加国際病院では2011年以降、少人数にこの手術を実施した。いずれも乳がんになった人が、反対側の乳房での発症を防ぐためだった。

「遺伝性乳がんだからといって、必ず発症するわけではありません。大事なのは、正しい知識のもとに、自分でどうしたいか考えて決めることであり、予防切除はその選択肢の一つ。今回、こういう手段があると認知されたことはよかったと思います」(同)

週刊朝日 2013年12月20日号

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