「バリキャリ」「肉食女子」など、女性は強くなったといわれる。そんな彼女たちでも、三十路の声を聞くころから「だれかいい人いないの?」「35過ぎると妊娠の可能性も下がるんだって」と、家族や親戚、その他もろもろからの「結婚プレッシャー」攻撃に悩むのも、また現実。そこに付け込む婚活ビジネスは、手を替え品を替え、いまだ盛況だ。

 こうした現実を目の当たりにして悶々とするアラサー及びアラフォー女性が今、その切れ味抜群の毒舌を賛美してやまない人物がいる。ジェーン・スーさん、40歳。ラジオパーソナリティー、作詞家、コラムニストなどさまざまな顔を持つが、今、もっとも注目される肩書は「未婚のプロ」だ。今月出版したばかりの初めての著書『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)でも強調し、発売直後に重版が決まった。一体、どんな人なのか。本人を直撃した。

「東京生まれの東京育ち。バリバリの日本人です」

 女子大を卒業してレコード会社に就職後、メガネを扱うベンチャー企業へ転職し、企画営業からマーケティングまでこなした。10年ほど前、ふざけてつけたアジア系米国人風の「ジェーン・スー」の名でネットなどに投稿すると、シニカルな観察眼とテンポの良い文章が雑誌編集者の目に留まり、連載コラムを手がけるようになった。それを読んだラジオ関係者から声がかかり、今度はパーソナリティーに抜擢。ポッチャリした体形も知られるところとなり、深夜のバラエティー番組「10匹のコブタちゃん」(フジテレビ系、今年9月終了)では、人気お笑い女芸人たちと共演……と、本人曰く「わらしべ長者的躍進」が続いている。

 ブレークのきっかけは今年2月末、自身のブログにつづった「三十路の心得10箇条」だ。「ハッと気付けば38歳になっているので覚悟すべし」「同い年の異性には細心の注意を払うべし」といった“名言”が、同世代の女性のツボにハマり、ネットで爆発的に広がった。

 この直後、出版社から「恋や結婚に悩む女性向けの本を」という注文が舞い込んだ。そして、このたび完成した1作目の帯には「未婚のプロ、ジェーン・スーに学ぶ新しい結婚指南書!」。だが、スーさんは、抑えた口調で警告する。

「実は、必ず結婚できるというハウツー本ではありません。ここで記したことをやり続けていると私のようになっちゃうぞ、こっちの水は甘すぎて抜けられないから結婚したければ今すぐ逃げろ!という反面教師的内容です」と、話はそれほど単純ではなさそう。ところで「未婚のプロ」ってどんな人?

「一生独身を貫くと決めたわけではないけれど、自由な時間が何よりも大切で、自分で稼いで自分のやりたいことができる楽しさを手放せない。独身という“麻薬”を知ってしまった、いわば独身お楽しみジャンキー(中毒者)を指します」

 そんなスーさんの著書から「私たちがプロポーズされない101の理由」のいくつかを抜粋してみたので、ご覧いただきたい。

・そもそも、彼氏がいない。もう3年以上。
・独身の楽しさが半減するぐらいなら、結婚しない方がマシと思っている。
・まだ本気出していないだけで、本気出せばどうにでもなると思っている。
・鉄を熱いうちに打たなかった。むしろ冷や水をぶっかけた。
・よんどころない事情もなく、実家に住み続けている。
・そろそろ「初めて経験すること」が、仏門に入ることぐらいになってきた。

週刊朝日  2013年11月1日号