優勝を決めた西武戦は、今季の楽天の強さを象徴していた。田中将大投手はピンチになると「ギアチェンジ」する。9回裏、1死二、三塁で3番栗山、4番浅村を迎えて、「絶対、変化球で引いてはいけない」と、8球全部150キロ超えの直球で連続三振に切って取った。
打線も7回、下位から四球と単打でつないで満塁にして、球団初の大物外国人、4番ジョーンズの右中間二塁打で決めた。今年は中軸の2人の外国人選出につなぐ意識が徹底していた。安易にこの言葉を使いたくないが、「絆打線」と呼びたい。
球団創設9年目の優勝について、どの選手も「早かった」という。創設当時のメンバーで優勝の場にいたのは小山伸一郎投手しかいない。球団社長以下、フロントも大きく変わった。しかし親会社のIT企業さながらの新陳代謝の激しさがなければ、9年での優勝は難しかったと思う。
ただ9年で変わらなかったものがひとつある。ファンだ。3.11のあと、「見せましょう、野球の底力を」といってBクラスに沈んだ責任を感じる選手は多い。しかし今年、本拠のKスタ宮城で声援を送っていた年配の男性は、「震災では選手も大変だったんだよ。選手に優勝させたかったから、今年は毎試合、応援に来てた」。
逆境にあってなお相手を思いやる。東北の美質がチームを支えた。
※週刊朝日 2013年10月4日号