今から7年前には小泉→安倍の禅譲が行われた (c)朝日新聞社 @@写禁
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 東京五輪が開催される2020年、ニッポンはどうなっているのだろうか? 半世紀ぶりの世界最大のイベントがもたらす近未来の明暗は……?

 五輪開幕時、日本を率いるのは39歳の小泉進次郎首相だ。自民党の支配はいまだ続き、多弱と呼ばれた野党は再編に踏み切れず低迷を続ける。7年後の政治風景を、本誌が大胆にシミュレーションした。

 開会式が行われた東京・新国立競技場。総工事費1300億円をかけたスタジアムで、各国首脳から熱い視線を浴びるのは若き日本の宰相、小泉進次郎氏だった。その2年前の2018年9月、自民党総裁選で圧勝。安倍晋三氏が持っていた戦後最年少記録の52歳を大きく塗り替える37歳で、首相の座に就いていた。

「東京は、日本は、おもてなしの心で世界の皆さまを歓迎します!」

 こう世界各国の報道陣に答えてみせた進次郎氏。この開会式こそが、12年に政権を奪還して以来、オール自民党で目指してきた“極点”だった。

 東京五輪の開催が決まった13年9月を境に、政治も変容するとみられる。

「おもてなしのため」「きれいな東京でお出迎え」を合言葉に、五輪関係予算がふんだんに盛り込まれるようになる。自民党議員たちは「総五輪族」となって、予算要求を膨らませ続け、都心に地方に分け前をばらまくと予想される。

 ちなみに1964年の東京五輪の際は、58年からの7年間で、1兆800億円の五輪予算が付いた。当時の国家予算の半分の金額だ。今回もそれに匹敵するような額が都市整備などに使われ、近年にない膨大な公共事業が各種景気を上向かせるに違いない。

 好景気に気を良くし、安倍氏は16年7月、衆参ダブル選に臨んで圧勝。衆院で憲法改正の発議要件である3分の2を獲得、参院でもあと一歩に迫ることになろう。

 ところが安倍氏の宿願である憲法改正は、好景気に沸く中、皮肉なことに国民の耳目をひく最優先の政策課題とはならない可能性がある。「改正するべきだ」は世論調査で依然5割前後を浮遊し、衆・参院は通っても、国民投票で賛成を得られるか見通せないのだ。

 そこで白羽の矢が立ったのが国民的人気を誇る進次郎氏というわけだ。憲法改正実現のため、安倍氏と、官房長官として支え続けてきた菅義偉氏が考案した「禅譲シナリオ」なのだ。

 安倍氏は自民党総裁に返り咲いた後、最大のテーマを「2期6年」の総裁任期をまっとうすることに定めた。宿願である憲法改正に向け環境づくりに邁進(まいしん)し、自身の手で実現できない場合でも、後継者に改正させるべく政権運営を行ってきた。安倍氏のライバルとされてきた石破茂氏については、能力は折り紙付きではあるが、長期政権の中で存在感は薄まる。穏健保守の宏池会会長の岸田文雄氏も、知名度はさほど高くない。

週刊朝日  2013年9月27日号