日本人の糖尿病は、インスリン分泌障害の2型の患者のほうが多い。日本人に合った血糖管理を提案する日本糖尿病協会理事長で、関西電力病院院長の清野裕医師に、新しいガイドラインについて聞いた。

*  *  *

 いま、世界の糖尿病人口の半分以上が日本を含むアジアの人々です。アジアは農耕中心であまり肉を食べない文化だったため、少量のインスリンが出ていれば糖代謝ができていました。それが、数十年で欧米型の生活に変わったためです。

 欧米人は、肥満型の糖尿病が多く、日本人はインスリン分泌が少ないため、太らなくても糖尿病になりやすいという特徴があります。最近は、肥満もインスリン不足も若年化する傾向にあり、早いうちに食事教育に力を入れないと、人生の大半を糖尿病治療に費やさなければならなくなります。

 日本糖尿病学会の2013年のガイドラインで出された新しい治療目標は、患者さんの病歴、病態、治療のサポート体制などをもとに、オーダーメードの治療を行うべきだという考えに基づいています。

 薬物療法は、欧米では肥満型糖尿病患者がほとんどのため、どの患者にも肥満型患者向けの「ビグアナイド薬」(一般名・メトホルミン)が第一選択薬になっています。しかし日本では、最初から患者の病態に合った薬の処方が推奨されています。

 最近、日本ではDPP‐4阻害薬の使用が増えています。「インクレチン」という消化管ホルモンの分泌作用を高める薬です。インクレチンはものを食べると腸管から分泌され、インスリンの分泌を促します。実際にDPP‐4阻害薬を使い始めてから、当院の患者さんのHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)の平均も、3年間で7.4%から6.7%に低下しています。

 薬物療法が効果を発揮するには、食事・運動療法が前提で、チーム医療が成功のカギです。医師、看護師、薬剤師、理学療法士、歯科医師、臨床検査技師らとともに、患者さんもチームの一員として、血糖コントロール、合併症の予防に取り組む姿勢が大事です。

 近くに専門医がいなくても、専門医がいる病院と連携しているクリニックの医師に、検査・診断・食事や運動療法の指導を受ければ、良質な治療を続けられると思います。

週刊朝日 2013年9月6日号