長寿の人は肉を好んで食べる“肉食系”という話がある。これは本当なのか? 「健康院クリニック」の柴田博医師に話を聞いた。

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 そもそも人類は、250万年も前から狩猟による肉食だった。魚を食べるようになるのはかなり後になってからで、農耕はわずか1万年前以降。つまり肉を食べて生き続けてきたのだ。

 人類の遺伝子は、4万年前から今と変わらず、100歳くらいまで生きる「種」としての能力を当時から備えていた。だが平均寿命が50歳を超える民族が出てきたのは、ようやく100年ほど前からだ。産業革命が起こり、肉の大量生産が可能になった19世紀末から20世紀にかけて、イギリスやフランス、スウェーデン、オランダ、アメリカ、オーストラリアといった国で肉を多く摂取できるようになり、寿命が延びていった。

 日本の平均寿命が50歳を超えたのは1947年だ。1965年、それまで増え続けていた脳卒中が減り始めた。理由は肉で、よく食べるようになった地域から成果が上がった。肉と乳製品の摂取が増えたことが決定打となり、世界に冠たる長寿国となった。

 では、なぜ肉が有効といえるのか。それは人間の体にいちばん近い食品だからだ。20種類のアミノ酸からできているたんぱく質のうち、9種類は人間の体で作れないため、外部から摂取しなければならない。これが必須アミノ酸で、最もバランスよく摂れるのが肉だ。貧血や骨粗鬆症、動脈硬化、心臓病、脳卒中、糖尿病、高血圧症などの予防にも効果がある。ただし、肉だけが優れているというわけではない。肉と魚を1対1、卵1個、牛乳200ccの摂取が望ましい。

 肉は、人類にとって最初の食糧であると同時に、近年、最終的に普及した食材だ。まさに文明の発達、生産力や経済力の象徴といえる。私の研究でも長寿の人は肉を摂っている。もっと肉を食べて健康的な生活を送ってほしい。

週刊朝日 2013年9月6日号

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