6度目のブームが到来している美輪明宏(78)。1950年代、類いまれな美貌で“シスターボーイ”と騒がれ、21世紀に入ってからはスピリチュアルブームの火付け役となった。今秋は、その数奇な人生を仏監督が辿ったドキュメンタリー映画の公開、野田秀樹が舞台化する作品の公演が相次ぐ。昨年末の「NHK紅白歌合戦」では、77歳の“最高齢新人”として出場し、ブレークした。

――前にも一度、(NHK紅白歌合戦に)出場しかけたことがあるとか。

「ヨイトマケの唄」がヒットした1965年にも、紅白で歌えないかという打診がありました。でも、当時は一人の持ち時間が2分半という規定があったんです。「ヨイトマケの唄」は6分ありますから、中途半端な仕事はしたくないと断りました。それ以来、紅白のお呼びはありませんでした。

――紅白での「ヨイトマケの唄」は、シンプルな舞台と相まって、圧巻でした。

 皆さんがキラキラキラキラたくさん照明をお使いになるだろうから、私のときはスポットライトの2本だけ。美術は何にもいらない。真っ黒でいい。歌だけで表現しますから、あとは全部いりません、と言いました。カメラの切り替えも極力少なくするようお願いして。歌の邪魔になるものは一切排除したかったんです。このあいだ、たけしさん(北野武)に会ったら、「何にもないというのがすごかったです」って言ってました。「ヨイトマケの唄」を歌い終えた後、まだ紅白が続いているのに、「ネットが大変なことになっています」と言われました。見させていただいたら、若い方から「親孝行しなければいけないと思いました」「金髪の変なタレントだと思っていたらすごい人だったんですね。ごめんなさい」とか。本当にネットの反応がすごかった。

――若い世代に響いたということですね。

 皆さん驚かれるのは、私のコンサートや芝居の客層が若いということ。今年で78歳でしょ。普通は、自分の年齢とともにお客さんの年齢層も上がっていくでしょう。他の年配のアーティストの方の場合は、会場全体が老人ホームみたいになっているんですよね。

 でも、私の場合は少し違う。下は中学生から、上はもちろん年配の方までで、平均年齢が30代なんですよ。それが63年間ずーっと。これは七不思議って言われてますけどね。

――「紅白歌合戦で、最も印象に残ったアーティスト」というアンケートで1位になり、歌手別の視聴率でも45.4%でした。しかし、その後、あまりメディアに登場していませんね。

 紅白の後、コマーシャルやバラエティーの出演依頼や雑誌の取材依頼がわーっときました。でもね、ブームといえるのは、今度で6回目なんですよ。もう、メディアの仕掛けがわかってますからね。一度持ち上げるんですよ。胴上げするんです。浮かれてたら大変ですよ。人を地面にたたき落とすために持ち上げるんですから。それをやられてたまるものかということで、取材をほとんど受けませんでした。コマーシャルもお断り。バラエティーはみんな却下。地方の講演の仕事は、今までどおりですけど。

週刊朝日  2013年9月6日号