弁護士が交代してからの動きは速かった。県弁護士会の協力を経て、災害ADR(裁判外紛争解決手続き)を利用することになり、練習場の土地を売って補償するスキームが決まった。復旧の支援を申し出た東京の解体業者が、鉄柱やネットの撤去に協力してくれた。
一方で、被害者側もSNSなどで心ないコメントに傷ついたという。その一人が振り返る。
「ゴネ得とかぬれ手に粟、などと投稿され、週末になるとやじ馬まで来る始末。避難所にいても落ち着きませんでした」
そして現在。
練習場の跡地にはドラッグストアや美容院、コインランドリーが開店した。ほかに戸建て住宅24棟を分譲する宅地開発も進行中だ。
「以前よりにぎやかになり、買い物にも便利になりました。(練習場の)経営者は近所にお住まいで、顔を合わせれば挨拶もします」(松山さん)
別の住民も言う。
「当初はボタンの掛け違いもありましたが、“雨降って地固まる”。これからもこの場所で暮らしていきたい」
それぞれの暮らしが始まっていた。
※週刊朝日 2023年1月6-13日合併号