「あ、うちの子が、いる」

 介護事務の仕事をしている横浜市の母親(48)は今年5月、夕食時にテレビで流れた子宮頸がんワクチン被害者の映像を見て、画面から目が離せなくなった。

 びくびくと、けいれんが続く女の子の姿。「娘と全く同じ。そういえば、娘も、ワクチンを打った後からおかしくなった」。そう気づくと、ショックで血が凍った気がした。

 高校2年になった次女A子さん(16)は、中1のときから剣道一色だった。通っている公立中学は関東大会に出るほどの強豪。部活のあとにはまた剣道を練習し、帰宅は夜中になることも多かった。実績を上げ、「将来は武道を生かせる警察官か自衛隊員になる」と夢を膨らませていた。

 ところが中3の夏、子宮頸がんワクチン「サーバリックス」を打ってから、接種した部位が大きく腫れた。しびれた感じもあった。「筋肉注射だから、そんなものでしょ」。母親は湿布したが、数日たっても痛みは続いた。

 ひどくなったのは、昨年2月に3回目を接種したころからだ。痛みは関節や腰に広がり、頭や目も痛んだ。剣道の稽古の途中でも突然ふらついたり、体が重くて思うように動かないことが増えた。

 9カ月後からは、けいれんも始まった。「お母さん、Aちゃんがおかしいよ!」。ある晩、長女が言いにきた。見ると、うつぶせに寝ていたA子さんが、魚のように、びくびくとはねていた。ひざから下が、背中につくほど大きく跳ね上がっている。A子さんを起こすと、「気持ちが悪い」と言う。激しいけいれんは1時間ほども続いた。

 行きつけのクリニックで診察を受けても異常は見つからない。だが、A子さんは、学校帰りの地下鉄内でつり革を握る手が震えだし、全身に震えが広がった。けいれんは頻発し、授業中にも震えが出る。早退せざるを得なかった。

 脳外科を受診。CT検査をし、脳波も調べたが異常はなかった。震える映像を撮影して医師に見せ、てんかんの検査もした。

 中学でのハードな練習がトラウマでは。部活の人間関係か。入院して調べましょう――。医者にも言われ、精神科への入院もやむなし、と考えていたとき、テレビで子宮頸がんワクチン接種後の被害者の映像を見たのだ。

 母親はインターネットを検索し、「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」に連絡した。連絡会の斡旋で、首都圏の被害者たちが国立精神・神経医療研究センター病院(東京都小平市)に集団受診する直前で、そこにA子さんも参加した。

週刊朝日  2013年7月26日号