強いストレスなどで気分が落ち込み、日常生活に支障が出る「うつ病」。国の調査によると患者数は70万人を超え、うつ病を含む精神疾患は、国民病の一つに数えられる。治療は薬物療法が中心だが、近年、新たな治療法が登場している。

 従来うつ病などの精神疾患は薬物を使った治療が中心だったが、薬だけでなく、医師との面接を通じて治療するのが「認知行動療法」だ。治療の有効性が認められ、2010年4月からは健康保険が適用されるようになった。

 認知行動療法の第一人者でもある、国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター長の大野裕医師はこう話す。

 認知行動療法では、つらくなった場面で自然に湧きあがってくる偏った考えを、現実に沿ったバランスの良い考えに修正し、問題を解決していく。治療は面接を1回30分以上、原則16回実施する。生活のリズムを取りながら行動を通して気持ちを活性化させたり、思考記録表(コラム)という用紙を用い、バランスの良い考え方ができるよう手助けしたりしていく。

 うつ病の病状が軽い人は、自分自身で認知行動療法を試すこともできる。「うつ不安ネット」(http://cbtjp.net)では、悩んでいる内容を書き込むことで、認知行動療法の手法を体験できる(有料)。

週刊朝日 2012年12月14日号