10月25日にいきなり辞職を発表した石原慎太郎前東京都知事(80)。突然の「投げだし」で、さまざまなプロジェクトの前途に暗雲が立ち込めている。
2016年の夏季五輪招致では、費用150億円のうち100億円を都税で負担したが、リオデジャネイロに敗れた。その後、「たいまつの火は消さないほうがいい」とリトライ。五輪は都知事としての宿願、と思えた。
辞職会見では、「東京を放り出すのか」と問われ、「東京のために国政でいいことをやらなくちゃいけない。そういう質問が出てくること自体が心外だな」と反論したが、次の知事がストップをかければ、ハイそれまでよ。結果的に「投げ出し」とみなされても仕方ないだろう。
4月から募り始めた「尖閣購入費」の寄付金14億7千万円も、石原氏は基金を作って管理すると言っていたが、中ぶらりんのままだ。
築地市場の移転問題もある。移転先の「豊洲新市場」の土壌からは、発がん性物質のベンゼンが環境基準の最大4万3千倍検出された。都は移転準備を進めているが、反対も根強い。石原都政4期を見続けたある都議は言う。
「五輪にしろ巨大な新市場計画にしろ、単に派手なことをやりたかっただけとしか思えない。4期目は議会でも覇気がなくて、都政に飽きてしまったように見えた。都民こそいい迷惑。振り回されただけですよ」
立つ知事跡を濁さず、とはいかなかった。
※週刊朝日 2012年11月9日号