50年に及ぶ格闘人生を終え、ようやく手にした「何もしない毎日」に喜んでいたのも束の間、突然患った大病を乗り越えて、カムバックを果たした天龍源一郎さん。2月2日に迎えた70歳という節目の年に、いま天龍さんが伝えたいこととは? 今回は「最強タッグ」をテーマに、飄々と明るく、つれづれに語ります。
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「タッグを組む」という言葉はあるけど、プロレスラーって、あるところから先は他人に対して踏み込まないんだよね。相撲の世界は他人にグッと入り込んで近しい関係になるのが多いんだけど。相撲は同じ釜の飯を食ったっていう意識から仲間が生まれるのに、プロレスラーにはそれが全くない。シリーズが終わったらみんなてんでんバラバラ。みんなプロレスラーは同じ仕事している人たち各々で生きているっていうのが正直なところ。
だから、最強タッグという言葉はあるものの、同志とか身内っていう関係にはなかなかならない。グレート・カブキさんとか古くからプロレス界にいる方で交流がある人は何人かいるけど、それでも「あの人、元気にしているかな?」って思うことはあっても、じゃあ、実際に電話してご飯でも食べながら酒を飲もうかってところまではいかなくて、今は電話したらすぐに飛んでくるような若いやつのほうが近い関係だね。その人にはその人の生活があるから踏み込めないものがある。
プロレスラーは個人事業主だからね。仲間じゃないっていうバリケードがあるというか、なんだか切られてしまっているような人間関係には、相撲から転向したときは戸惑ったよね。それは寂しかったし、打ち解けてググって入り込みたいのに、向こうの方から遮断されて気持ちの拠り所がないっていう感じだったな。師匠である馬場さんに対してもそうだったし、同じレスラーに対してもみんなそうだった。相撲で団体生活していたから、そこが理解できなくてすごく寂しかったな。