あり得ない話だけど、もし、俺が若いお姉ちゃんと再婚して、自分が過去に苦しかったときの話をしたって「何言ってんのこの人?」って言われるだけだよね(笑)。人生で同じ歩みをしていないと、俺の言っていることに呼応してくれないってなんか虚しいじゃない?「あの時こうだったね」って話すと、「そうそう」って答えてくれる女房や子ども、仲間がいるから、ここまで頑張れたっていう俺がいる。ここまで生きてきてよかったなって思える自分がいる。それは取りも直さず一番近くにいた、本当にいい時も悪い時も知っている女房がいてくれたから。

 プロレスの試合が終わって、本来だったらマッサージとか整体にかかって体をほぐしてもらうところ、うちは女房がやってくれた。そんなにたくさんファイトマネーを貰っていないから、試合が終わって帰ってくると、女房が全身マッサージして体の張っている筋肉を和らげてくれた。うちの女房は腕の力とか指の力とか強かったからね(笑)。

 うちの娘が小学校時代、学校の友達から「プロレスなんて、八百長だ! おまえの親父はいい加減なことばっかやってやがる!」って言われて、いじめられたことがあった。うちの娘は、自分のお母さんがお父さんの体を一所懸命マッサージしたり、家ではお母さんがお父さんを立てている姿も見ているから、「うちのお父さんは絶対に違う!いい加減なんかじゃない!」って、ケンカして帰ってきたよ。うちの娘は小さいころから体が大きくて男に負けなかったから、まだ、助かったよね。いじめられてそのまま帰ってきたら可哀そうだったと思う。朝は、バナナをシェイクしてプロテイン入れて、それを飲ませて学校送り出していたからね(笑)。

 小学生のことだから、いじめているつもりではなくて、からかっているだけなんだろうけど、娘にとっては癪に障ることだよね。自分の親父が体を痛めて家に帰ってきて、自分のお袋がマッサージしているという姿を見ているし、休みになると痛めた体を治すために病院に通ってばかりいるのを知っているわけだからね。俺は世間から揶揄されているときもあったし、そんなときにいじめられても立ち向かう娘の想いも知っていた。

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女房を先に失ったらノムさんみたいに落ち込むよ