週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』に掲載している病院ごとの区域切除の数は、技術水準を測る一つの目安にはなり得る。

「区域切除の適応は2センチ程度の小さいものなので、手術の技術が伴わないと、あまり数多くこなすことができません。区域切除の数が一定数ある病院では、それなりの技術水準が保たれていると思います」(山下医師)

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』掲載の放射線治療や定位放射線治療(SBRT)の数字からは、肺がん治療に対する院内の態勢も読み取れる。

「放射線治療やSBRTの数が一定数あれば、専門の機器類が装備されており、外科だけでなく内科や放射線科の医師もそろって治療の連携態勢ができていると考えられます」(同)

 リスクも大きく難しい肺がん手術は、様々な症例に対応してきた経験がとても重要だ。

「手術がスムーズにいくかどうかは実際にやってみなければわかりません。患者さんの状況によって、手術中に不測の事態が起きる可能性は常にあります。手術数が多い病院の場合、たとえ何か問題が起きても対処できる技術と人員、態勢が、ある程度は整っていると考えられます。肺がんの場合には、非常に基本的ですが、やはり手術数が多い病院を中心に探すのがよいのではないかと思います」(鈴木医師)

 病院を選ぶ際には、国立がん研究センターが公表している「がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計報告書」を参考にするのも一つの方法だ。

「がん診療連携拠点病院の、がん別の5年生存率が公表されています。肺がんの場合、手術があまり簡単すぎないステージIBかIIあたりの数字が判断の目安になると考えられるので、手術数とともに病院選びの参考にするとよいのではないでしょうか」(山下医師)

 肺がん手術では、実績や経験の差が治療に顕著に結びつく。手術数が、病院選びのより重要な目安になると言えそうだ。(文/梶 葉子)

≪取材した医師≫
順天堂大学順天堂医院 呼吸器外科 主任教授 鈴木健司 医師
国立病院機構 四国がんセンター 呼吸器外科 副院長 山下素弘 医師

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』より

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