なぜ、そういう結論に出たのかわからないですけど、
「とにかく言うことを聞いて、DMATの中で仕事をしていって、だんだん顔が割れてきたら感染のこともできるかもしれないから、それでやってもらえないか」
と非常に奇妙な依頼を受けたんですけど、ほかに入る方法はないものですから、
「分かりました」
と言って、現場に行きました。
そしてダイヤモンド・プリンセスに入ったわけです。
入ってご挨拶をして。最初は「この人の下につけ」と言われた方にずっと従っているのかな、と思ったら、DMATのチーフのドクターとお話をして、そうすると「お前にDMATの仕事は何も期待していない。どうせ専門じゃないし」ということで、「お前は感染の仕事だろう。だったら感染の仕事やるべきだ」という風に助言をいただきました。これDMATのトップの方です、現場のトップの方。
「そうなんですか」と。私はとにかく「言うことをきく」というふうに約束していましたので、「感染のことをやれと言われた以上、やりましょう」ということで、現場の案内をしていただきながら、いろんな問題点を確認していったわけです。
それはもう、ひどいものでした。この仕事を20年以上やってですね、アフリカのエボラとか、中国のSARSとか、いろん感染症と立ち向かってきました。もちろん、身の危険を感じることは多々あったんですけど、「自分が感染症にかかる恐怖」はそんなに感じたことはないです。
どうしてかというと、僕はプロなので、自分がエボラにかからない、SARSにかからない方法は知っているわけです。あるいは、他の人をエボラにしない、ほかの人をSARSにしない方法とか、施設の中でどういうふうにすれば感染がさらに広がらないかということも熟知しているからです。それがわかっているから、ど真ん中にいても怖くない。
アフリカにいても中国にいても怖くなかったわけですが、ダイアモンド・プリンセスの中はものすごい悲惨な状態で、「心の底から怖い」と思いました。これはもう「COVID-19に感染してもしょうがないんじゃないか」と本気で思いました。