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2009年に『戦略PR 空気をつくる。世論で売る。』(アスキー新書)を著して以降、日本を代表するPRストラテジストとして活躍する本田哲也さんとマーケティングのスペシャリストである足立光さん対談を、足立さんの著書『世界的優良企業の実例に学ぶ「あなたの知らない」マーケティング大原則』(朝日新聞出版)から紹介。そもそも「PR」とは何なのか? 本田さんに聞いた。
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足立:本田さんが『戦略PR 空気をつくる。世論で売る。』という本を出してから10年ほど経ちました。「戦略PR」という考え方がだいぶ定着した感じがします。ちなみに、本田さんがよく引用する『空気の研究』の山本七平は、実は私の母方の叔父なのですが。
本田:そうでしたよね。私は、2000年から外資系企業でPRの仕事をしていたのですが、当時、ずっとジレンマがあったんです。同じPRと呼んでいても、アメリカのPR会社がやっていた「世論形成」と、日本のPR会社がやっていた商品のPRとに、ものすごく落差があって。業界的にも日本ではPR会社は広告代理店の下に付くもので、いわば下請け扱いでした。でも、私は「本当はPRは広告よりすごいことができるんだ」と考えていたわけです。そこで、『空気の研究』の影響もあって、PRとは「世の中の空気を形成することである」と定義しました。「空気をつくるのは広告ではなくPRです」と言い切ったからこそ、日本のいろんな人の目から鱗が落ちたのではないかなと思います。
足立:本田さんの「戦略PR(空気づくり)」は、いわゆる「ノンプロダクト・マーケティング」ですよね。つまり、その製品やサービスのことを直接訴求しなくても売れるようにする、ということ。昔から私もそれに注目していましたが、業界的に注目されるようになったのはソーシャルメディアができたというのが大きいでしょう。広告で「自分で言う」のではなく、PRで「人に言ってもらう」ほうが圧倒的に効果があるというのがわかってきたわけです。
本田:メディアが圧倒的に増えたおかげで、ちゃんとマーケティング戦略として組み立てられるし、実行できるようになりました。それで、業界的に一人語りの広告から第三者発信のPRに変わってきている。それがここ10年、15年で起こっていることです。