足立:でも、それをやらない企業がまだいっぱいあります。戦略PRをうまくできる企業とできない企業、どこが違うんでしょうか。

本田:まず「マインドセット」が大事なんです。個人レベルに落とせば、おしゃべりな人に「いいから、あんまりお前の話をしすぎるな」という話じゃないですか。「たまには、自分のいないところで、誰かにあの人はいいよと言ってもらおうよ」という話。この「自分がいないところ」というのがポイントです。そして「誰か」は、身内とかではなく、直接利害関係のない人。そのほうが信用されます。なので当然、自分がいないところでの会話の中には、自分とは直接関係ない話も多く出てくるわけです。これが戦略PRです。広告に慣れている企業も「PRやらなきゃね」と頭ではわかっていますが、PRのプランを打ち合わせしている中で、必ず「それって、わが社の商品と関係ないじゃないですか」なんて話になります。でも、第三者発信なのだから、自社にとって都合のいい話だけをするわけがない。よもやま話があって、その流れの中で、「そういえば……」とようやく商品の話が出てくる。第三者には第三者の文脈があるわけです。こうしたPRの原則について、まだ多くの企業では、頭でわかっていても気持ちがついてこないという状態です。

足立:広告とは違って、基本的にPRはコントロールできません。それを何とかしようというのがPRを戦略的に活用することであって、考え方が根本的に違うんですよね。

本田:広告に比べて、PRの予算は非常に小さいわけです。それでも、社内の稟議を通すのがいまだに難しい。広告であれば、いくら使います、全国でこれくらい露出します、内容も十分に吟味したこれです、というプレゼン内容が「確実に」実行されます。でもPRは、全国でどれくらい出るかも、露出する内容も、端的には「やってみないとわからない部分があります」としか説明できない。なので、旧来のマインドセットのままだと、社内的には「そんなので、オレにどうやってハンコ押せって言うんだ」となるわけです。

足立:PRの場合は「こうなったらいいな」にハンコを押さなきゃいけないんですよね。「不確実だけどバケるかもしれない。そこに投資をしましょう」というのがPRです。その意味でも広告とは、まったくマインドセットが違いますよね。

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