50年に及ぶ格闘人生を終え、ようやく手にした「何もしない毎日」に喜んでいたのも束の間、突然患った大病を乗り越えて、カムバックを果たした天龍源一郎さん。2月2日に迎えた70歳という節目の年に、いま天龍さんが伝えたいこととは? 今回は「死に際」をテーマに、飄々と明るく、つれづれに語ります。
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2月2日に70歳の誕生日を無事に迎えたばかりなのに、「死に際」の話だって?(笑)70歳にもなると先に逝かれた方はたくさんいて、馬場さんが亡くなったときもびっくりしたけど。亡くなった人たちの中で、ジャンボが一番戦ってきた仲間だったから、あいつが亡くなった時はやっぱり一番驚いたよね。彼は自分の人生設計を見据えて、ずっと段取り良くいろんなことをやっていたのに……。本当にあれこそ志半ばで終わってしまった。
亡くなった方の子どもを見ると、早くに亡くなってしまった分あのときのお父さんがどんなだったか知らないんだよなと思うことがあるんだよね。「良かったら、俺が酒でも飲みながら話してやろうか?」って思う。たまたま試合を見に来たジャンボの息子に、自分の子どもみたいな感じで「元気かぁー!」なんて声かけてね。生きている時は忙しくて子どもも幼かったから、腹いっぱい、家族と付き合えなかった人もいるんじゃないかなって思うことがある。
俺はね、家族に言っているんだよ。「明日俺が起きてこなくても、盛大にワァーっと送り出してくれ」って。それはいつも本気で向き合える家族が見つかったから、満足して毎日を送っているからこそ言えるようになったんだけどね。レスラーでも試合終わって家に帰ってきて次の日の朝起きてこなかった話をちょこちょこ聞く。激しい運動をして「疲れた」って言って、次の朝、心停止して起きてこなかったってことはある。いつ、そういうことが自分の身に降りかかるかわからないと思っていた。だから、いつ死んでも「盛大に送り出せ」って家族には言ってきたんだ。ただ、葬式に呼んでほしくない人のリストはもう作ってあるよ(笑)。「こいつは絶対呼ぶなよ!」っていうリストを家族に託しているのと、盛大に送り出してくれよっていうことだけは伝言しているんだ。ある意味、究極の終活だよ。