1等寝台の室内には洗面台があるほか、近年に導入された新型車両にはテレビモニターが備わる。また、JR西日本から譲渡された寝台車が1・2等ともに運用されており、「A個室シングルデラックス」として特急「瀬戸」などに使われた「オロネ25形300番台」が1人用1等寝台個室として連結される場合もあるが、定期運用ではないため出会えたらラッキーといったところだろうか。
一方、2等寝台は通路を挟んで線路と並行に2段ベッドが並ぶタイプが主力。日本では「プルマン式」とも呼ばれるスタイルで、下段ベッドを折り畳むとボックスシートに変身。タイ国鉄ではベッドの設営も解体も営業運転中に実施されるため、その様子を間近に見学する楽しみもある。
ちなみに、このタイプは日本ではA寝台として用いられてきたが、ベッド幅や天地の余裕も十分で快適に過ごすことができるに違いない。ただし上段は窓がないため、下段が断然オススメだ。なお1等寝台とは異なり、こちらはベッドごとにカーテンがある。
2等寝台も1等と同様にJR西日本からの転籍車が運用されるケースもあり、日本で「2段式開放B寝台」と呼ばれたオハネ25形などとの再会も楽しみといえそう。しかし、運用はイレギュラーで、よほどの情報通でもなければ狙って乗ることが難しいのは残念だ。
ちょっと余談だが、日本との違いをもうひとつ。タイ国鉄では、寝台の利用者(乗客)が途中で入れ代わることがあるのである。
日本の寝台車では、たとえば出雲市~東京間を走る「サンライズ出雲」で大阪~東京間の予約が入ると、その寝台の出雲市~大阪間は空いたまま。ところが、タイ国鉄では一般の座席と同様に区間ごとに寝台券が販売され、その都度リネン類も交換されるのである。こんな体験もまた、異国ならではの楽しみなのではないだろうか。
■運賃・料金の格安感も魅力!
というタイ国鉄寝台列車だが、利用料金はどうだろうか。
タイ国鉄では基本運賃が等級別になっているほか、特急や快速といった緩急、寝台料金とさらに冷房の有無によっても格差が設けられているが、総じて日本の感覚で見ると格安といってよさそうだ。
クルンテープ(バンコク)~チェンマイ間の特急9・10列車で見ると、1等寝台下段が最高で1653バーツ(約4960円/1バーツ約3円で換算)、同列車最安値の2等寝台上段だと941バーツ(同2325円)。仮に快速109列車の3等座席車(冷房なし)だと231バーツ(同695円)である。