同区間はおよそ751キロで東京~倉敷間を少し越える距離に相当する。同区間をJRの寝台特急「サンライズ出雲」で比較すると、最安値の「ノビノビ座席」で1万4240円(通常期)、1等寝台に相当する「A個室シングルデラックス」だと2万7450円(うち運賃は1万480円)。日本とタイ両国の物価差や寝台設備の違いなどもあり単純に比較しても意味はないかもしれないが、少なくとも日本の感覚からすれば格安で鉄道の旅が楽しめることに違いはない。なにしろ、東京~倉敷間相当の運賃がわずか134バーツ、400円ほどなのである(普通列車3等運賃)。

 利用にあたってはクルンテープ駅をはじめ駅窓口で切符が購入できるほか、タイ国鉄公式WEBサイトからの予約も可能。WEBでは切符1枚ごとに30バーツ(約90円)の手数料がかかるものの、寝台や座席位置の指定が可能など使い勝手はいい。

 WEB予約にはクレジットカードが便利で、乗車人員ごとに氏名とパスポート番号の入力が必要。決済後に発行されるE-Ticketをプリントして持参すればそのまま乗車できる(印刷は必須で、スマホ画面などでの乗車は不可)。私も寝台列車などの予約には愛用しているが、90日前からの予約が可能(乗車区間などにより例外あり)なので、タイ訪問の際には試してみてはいかがだろうか。

 各地を格安運賃で結ぶ長距離バスやLCCなどライバルの多い寝台列車だが、人気は上々。列車や日程によっては寝台券の入手が困難なケースも少なくない。チェンマイ発着列車は日本人を含めた外国人利用も目立つが、タイ市民の気軽な足として愛用されており、そんなところも往年の日本のブルートレインを彷佛とさせる。そんなちょっとノスタルジーも誘うタイの寝台列車。オススメの海外鉄道旅である。(文/植村 誠)

植村 誠(うえむら・まこと)/国内外を問わず、鉄道をはじめのりものを楽しむ旅をテーマに取材・執筆中。近年は東南アジアを重点的に散策している。主な著書に『ワンテーマ指さし会話 韓国×鉄道』(情報センター出版局)、『ボートで東京湾を遊びつくす!』(情報センター出版局・共著)、『絶対この季節に乗りたい鉄道の旅』(東京書籍・共著)など。

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?