外国人からの問い合わせに英語や中国語で対応する職員(撮影:井上啓太)
外国人からの問い合わせに英語や中国語で対応する職員(撮影:井上啓太)
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回収日ごとに仕分けされた大袋。なかには大量のネックピローが詰められていた…(撮影:井上啓太)
回収日ごとに仕分けされた大袋。なかには大量のネックピローが詰められていた…(撮影:井上啓太)
破損などで回収されたスーツケース。場合によっては新品と交換することもある(撮影:井上啓太)
破損などで回収されたスーツケース。場合によっては新品と交換することもある(撮影:井上啓太)
「手荷物や遺失物にも、お客様の思いが詰まったそれぞれのストーリーがあるんです」と仕事に情熱を注ぐ黒宮美梨さん(撮影:井上啓太)
「手荷物や遺失物にも、お客様の思いが詰まったそれぞれのストーリーがあるんです」と仕事に情熱を注ぐ黒宮美梨さん(撮影:井上啓太)

 海外への玄関口である成田空港。1日に平均700便以上が離発着し、約12万人が利用する巨大空港である。日々、多くの人が行き交うこの場所で、トラブル対応に奔走する人たちがいる。ANA成田エアポートサービスの「手荷物サービスセンター」だ。約50人の職員が、乗客の手荷物の管理・受け渡しや、紛失物への対応、空輸でスーツケースが破損した際の賠償など、荷物の管理業務を一手に担っている。知られざる彼らの一日に密着した。

【写真】忘れ物の大量の山 そのうち大部分を占めるのは…?

*  *  *

 人もまばらな正午過ぎ。成田空港第一ターミナルのANAバックヤードに、この日遅番の黒宮美梨さん(24)が出社した。午前8時半から勤務している早番の担当者から引き継ぎを受けると、1本の電話が鳴った。

「イヤホンを紛失した。届いていないか」

 外国人からの問い合わせだった。慣れた様子で英語で対応する黒宮さん。数分間の通話のあと、問い合わせ内容と一致したイヤホンが、遺失物の管理棚から見つかった。イヤホンはその後、郵送で持ち主に送られるという。

「ここには遺失物の問い合わせが毎日数十件以上寄せられます。外国人の方からの問い合わせも多いので、センターには英語や中国語が流ちょうな職員が控えています」

 同社の採用HPをみると、「英検2級もしくはTOEIC550点以上が望ましい」とある。そして入社後も社内の言語セミナーを受講し、職員たちはスキルアップに励んでいるという。なかにはTOEIC満点(990点)の人も少なくないというから驚きだ。

 特別に彼らの業務メールをみせてもらうと、画面いっぱいに英語がびっしり。英検3級の記者には内容がまったくわからない。何が書かれているのか。黒宮さんが説明してくれた。

「上海行きの便に乗ったお客様から『クレジットカードを機内に忘れた』という届け出がありました。その後、現地の空港で発見されたのですが、そのお客様は今シンガポールにいます。カードをどう送るか、関係各所と調整していました」

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