令和2年がスタートした。皆さん、どんな新年を迎えているのだろうか。
お正月に決まってニュースになる、高齢者がもちを詰まらせて死亡する事故。もちのほかにも、年末年始は救急搬送が増加するという。「それは何故か?」、多摩総合医療センター救命救急センター部長の清水敬樹医師に、事例と対策を聞いた。
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「もちによる窒息事故は毎年必ずといっていいほど起こります。テレビなどで大きく啓蒙されているにも関わらず、一向に減りません。ほかにも、事故でいうとアルコールがらみが多い。寒い時期なので、軽い症状だと風邪やインフルエンザ、重症なものだと心筋梗塞や脳梗塞が多く搬送されてきます」
多摩総合医療センターで救命医を務める清水医師はそう話す。年間でも救急搬送が多いのは、夏の熱中症と年末年始のもちとアルコール。年末年始のもちによる窒息は東京都では100例程度とのデータがある。
■ちぎれる、のびるなど、ベテラン救命医も苦労する
特に毎年ニュースにもなるもちによる窒息は、介助できない場合には短時間で死に至る危険な事故だ。のみ込む力の弱くなった高齢者に多い。
「早食いの人は特に、つまらせやすい傾向があります。もちがのどに詰まるということは、首を絞められているようなもの。心停止になり、亡くなる確率のほうが高い。救急車が到着するまで最低でも7~8分はかかり、周りがパニックになっている場合は救急車を呼ぶことにも時間がかかってしまいます。高齢者の方や家族は、もちは詰まる食べ物だということを大前提として食べる工夫をしてほしい」(清水医師)
もちの窒息は、ベテラン救命医の清水医師でも苦労する事案だという。
呼吸の気道を確保してから、気管支鏡などの器具を使ってもちを取り出すが、ちぎれたりのびたりと処理が困難。時間をかければ取り切ることは可能だが、患者は苦しい状態が続く。
詰まったときに掃除機で吸うなどの対処法もあるが、いざとなった時に動ける人は少ないだろう。もちは小さくして口にするなど、あらかじめ対策をしておこう。