ドタバタ劇に巻き込まれた入来祐作 (c)朝日新聞社
ドタバタ劇に巻き込まれた入来祐作 (c)朝日新聞社

 プロ野球はストーブリーグに突入した。各チームの来季へ向けた補強戦略なども気になるところだが、シーズンオフとなり、プロ野球がない日々に寂しい思いをしている方も少なくないだろう。そこで、今回は「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、継投で起きた珍事件を振り返ってもらった。

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 1点差逃げ切りなるかどうかの重要局面で、マウンドに上がった抑え投手が打者に対して1球も投げずに“0球降板”する珍事が起きたのは、1989年4月28日の中日vs巨人(東京ドーム)だ。

 延長11回表、仁村徹の2号ソロで4対3と勝ち越した中日はその裏、鹿島忠に代わって守護神・郭源治を送り出した……否、送り出したはずだった。

 実は、郭は4月16日の阪神戦(甲子園)で左足の筋肉を痛めて8回途中に降板して以来、7試合ぶりのマウンドだったが、やはり完調ではなかったようで、マウンドで投球練習中に困惑した表情を見せ、岡田功球審に異変を訴えた。

「ブルペンでは大丈夫だったが、マウンドで(左足に)ピリッときた」(郭)。

 マウンドに上がった投手は少なくとも1人の打者と対戦しなければ交代を認められないのがルールだが、負傷の場合は例外。緊急事態を前に、岡田球審は「郭投手はマウンドで足を痛めたため、急きょ交代を認めました」と特例を適用した。

 郭に代わって田中富生がマウンドに上がり、“0球降板”の郭は記録に残らない。77年6月19日のライト(巨人)以来、史上6人目の珍事となったが、その結果、作戦を練り直さなければいけなくなった巨人・藤田元司監督は「あんな手があるのか。今度ウチも使わせてもらいます」と皮肉まじりにチクリ。スクランブル登板の田中は、2四球を許したものの、何とか無失点で切り抜け、中日が4対3で逃げ切った。

 沈着冷静なイメージの強いダイエー・王貞治監督が、現役時代の日米野球(66年)での走者追い越しによる本塁打取り消し事件に続いて、長嶋茂雄に変身(?)してしまったのが、95年5月30日のオリックス戦(福岡ドーム)だ。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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