今年のドラフトでヤクルトに1位指名された奥川恭伸 (C)朝日新聞社
今年のドラフトでヤクルトに1位指名された奥川恭伸 (C)朝日新聞社

 セ・リーグのワースト記録に並ぶ16連敗を喫するなど、2年ぶりの最下位に沈んだヤクルト。来季への巻き返しを図るべく、このオフは早々に新外国人のエスコバーを獲得し、FA戦線でも福田秀平と交渉するなど積極的な補強に動いている。

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 そんな中でも期待が高いのが、3球団競合で引き当てたドラフト1位の奥川恭伸だ。そこで今回は選手、コーチ、二軍監督して多くの投手を見てきた八重樫幸雄さんに、過去の大物ルーキーを振り返りながら奥川が活躍するためのポイントについて聞いた。

――早速ですが、奥川のピッチングは映像などでご覧になりましたか?

八重樫:甲子園は何度か見ましたよ。ここ10年くらいの中でもコントロールは一番かもしれませんね。高校生であれだけしっかりと狙ったところに投げられる選手は珍しいと思います。

――投手陣が苦しいということもあって、早くも開幕一軍、ローテーションという声も出ています。

八重樫:でも高校生だからまずは無理をさせないことですね。見た目の体は大きくても、中身ができていないことが多いですから。キャンプは一軍スタートになりそうですけど、そこで頑張り過ぎて故障というのが怖い。まずはしっかり鍛えてプロに慣れて、オールスター明けくらいに一軍で投げるくらいで考えておいた方がいいでしょう。

――八重樫さんがご覧になってきた中で、奥川投手と同じように高校から入ったピッチャーで印象に残っている選手となると誰になりますか?

八重樫:サッシ―(酒井圭一)かな。ボールがズドーンと来る感じで凄く重かった。高校生ではなかなかあんなボールを投げるのはいないですよ。ただフォームをいじって肘を壊したのがもったいなかったね。あとオープン戦で打球が顔面に当たったのも不運でしたよね。

――早くから先発で活躍した選手だと石井一久さん(現楽天GM)が思い浮かびますが、石井さんはどうでしたか?

八重樫:ボール自体は良かったですけど、入ってきた時はコントロールがとにかく悪かった。だから最初はどうしても使いづらかったですよね。今も何考えているか分かりづらいけど、今以上にぼーっとしてた(笑)でもそれで色んなことを聞き過ぎずに、上手く受け流せたのは良かったのかもしれませんね。

――他にヤクルトでは荒木(大輔)さん、川崎(憲次郎)さん、五十嵐(亮太)投手なんかが高校卒で早く出てきていますが、それぞれ印象はどうでしたか?

八重樫:荒木はボール自体は大したことなかったんだけど、試合でマウンドに上がると雰囲気が変わりましたね。凄く強気に投げられる。あと投球術とかは上手かったですね。川崎は言うほど速いと思いませんでしたけど、シュートを投げられるようになって変わった。ただ故障に弱かったのが残念だったね。
 五十嵐も石井と同じでコントロールが悪かったけどとにかく真面目。若い時からよく走っていました。それをずっと続けられたからこれだけ長くできてるんじゃないですかね

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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