そして、翌81年には、打率3割2分6厘で初の首位打者を手にする。プロ3年目の快挙は、「打撃の先生」との出会いがもたらした結果でもあった。

 同年のキャンプの特打ちで、たまたま控え捕手の土肥健二と隣り合わせた落合は、腕のしなりを利用し、バットをこねることなく、素直に送り出す一連の動作を見て、「いい打ち方だな」と魅せられた。最初は真似ることから始め、自分のものに練り上げたこの“神主打法”が後に3度の三冠王を生む原型となった。

 人から教わることを嫌い、山内監督の指導をも拒んだ落合が、唯一学んだ“師匠”が、実働14年で497安打、規定打席に達したことが一度もない土肥だったのは意外な事実だが、落合は言う。「名のある選手だから見るところがある。名のない選手だから見るところがない、というもんじゃないんだ」(『豪打列伝2』 文春文庫)。オレ流ならではの名言である。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2018」上・下巻(野球文明叢書)。

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