最終滑走で登場した佐藤は、演技後「今までにないような緊張」だったと振り返っている。リンクサイドでは、演技を終えた鍵山が佐藤に声援を送っていた。
「(鍵山の)点数を見て『やっぱりすごいな』と思って……『自分も頑張らなくては』と思ったんですけれども、それでも緊張の方が大きくなってしまって、それで最初のジャンプがパンクしてしまいました」(佐藤)
逆転優勝のための切り札だった佐藤の4回転ルッツは、回転不足と判定される。『ロミオとジュリエット』の旋律の中で、昨季より数段成長したスケーティングと表現も見せたが、ジャンプで細かいミスが続いた。演技を終えた佐藤は、見守っていた鍵山と握手を交わして向かったキスアンドクライで、うつむいて涙をぬぐった。佐藤のフリーのスコアは139.01、合計213.20で、鍵山には及ばず2位に終わった。
ミックスゾーンにはさっぱりとした表情で現れた佐藤は、鍵山について「ライバルであって、友達でもあって」と語った。
「いい刺激もらって、優真がいることで僕も成長できると思うので、これからも二人で一緒に頑張っていきたい」
また鍵山も、佐藤を大切な存在だと感じている。
「氷上だといいライバルだと思っていて、陸上だといい友達。いい関係なんじゃないかな」
鍵山と佐藤はジュニアGPファイナルに続き、年末に行われる国内最高峰の大舞台・全日本選手権でも同じリンクに立つ。競い合う若い二人が、日本男子の戦いをさらに熱くする。(文・沢田聡子)
●プロフィール
沢田聡子
1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」