きっかけは、同年7月ごろ、杉谷本人から「打撃練習終了のアナウンスの際に、“杉谷選手、打撃練習終了です”と言ってほしい」とリクエストがあったからだとか。ただし、両者は球場の窓越しに言葉を交わすだけの関係で、特に親しいわけではなかった。

 そんな事情もあり、当初はためらった鈴木さんだったが、その後、杉谷から「やってくれないの?」と重ねてリクエストされたことから、9月に深夜番組のノリで1回実行したところ、本人のみならず周囲からも「次もお願いします」と要請され、以来、すっかり定番化した。

 その後も「超絶怒涛のムードメーカー、野球を愛し、ファンに愛され、スタンド、グラウンド、審判団、そのすべての笑顔の生みの親」「シーズンオフを凌ぐ活躍で、シーズン中にもかかわらず、とても目立っております」など数々の“名セリフ”が生まれ、ついに昨年放映の「プロ野球珍プレー・好プレー大賞」で、選手・監督以外の球団関係者では初の大賞受賞という快挙を成し遂げた。

 目立ちたがり屋全開のパフォーマンスで「うるさ杉谷」の異名をとる杉谷が、勝利を呼ぶ2打席連続弾を放ったにもかかわらず、チームメートからサイレント・トリートメントを受けたのが、今年5月23日の楽天戦(札幌ドーム)。

 この日2番センターでスタメン出場した杉谷は、初回に先制の中犠飛を記録すると、3対1とリードした5回1死、辛島航からファウルで粘った末、10球目を右打席から左越えにシーズン1号ソロを放つ。

 ところが、ダイヤモンドを1周してベンチに戻ってきたヒーローをハイタッチで迎える者は皆無……。

「それならば」と一層闘志を燃やした杉谷は、5対2で迎えた6回2死二塁、今度は左打席から2打席連続となる弾丸ライナーの2ランを右翼席にたたき込んだ。

 左右両打席でのダブル本塁打は、球団では07年のセギノール以来の快挙。しかも、プロ11年目、通算10号目での達成という超レアなオマケ付きだったが、それでもベンチのナインは当然のように無視。カッコがつかなくなった杉谷は、「冷たいじゃない」と言わんばかりに、鶴岡慎也に抱きつくパフォーマンスで笑いを取った。

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サイレント・トリートメントでも笑いを