関西では大人気のメッセンジャー黒田(撮影/中西正男)
関西では大人気のメッセンジャー黒田(撮影/中西正男)
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 関西でオンリーワンの存在感を放つ漫才コンビ「メッセンジャー」の黒田有。来年1月には50歳を迎え、芸歴も30周年に突入していく。今年2月には19歳下の一般女性と結婚。この1年であらゆる波が一気に押し寄せる形となっている。

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「ウチは僕が生まれた時から親父がいなかった。なので“お父さん”がどういうものか、自分の感覚としては知らないんです。まだ子どもはいないですけど、結婚して、まずダンナにならないといけないんですけど、そこにもなれないんじゃないか。人に聞いてできるもんでもないし、そこは結婚に際して、実は不安に思っていたところだったんです。家に人がいるというのも正直まだ違和感もありますし。でも、それで初めて気づくこともありますし、なんでも積み重ねやなと思います」

 これまで幾度となくインタビューをしてきたが、その中で度々出てきたのが“50歳”という節目についての話。

「何もかもリセットしているかも」「映画を撮ることを考えているかもしれない」などとも話していたが、もう数カ月後にはその節目がやってくる。

「若い頃は『まだまだ先がある』『伸びしろがある』と思ってましたけど、今になって“本当に自分がやれることの範囲”が分かってきました。例えば、今から背が高くなるのも無理。目が良くなるのも無理。プロ野球選手にもなれない。でも、筋トレで筋肉をつける。これはいけるかもしれない。“できること”と“できないこと”の線引きがクリアになっている。だったら、不得意なものを伸ばすことはもうやめておこうと。傷つくし、しんどくなるだけやから。逆に、自分が得意かなと思う部分はその分チャレンジする。そこの現実が見えたことは、自分の中ではすごく楽なことでした」

 その中で、意識に明確な変化も訪れた。例えば、これまでは元板前という経歴を生かして番組内で料理をすることもあったが、料理が趣味かと問われれば、そこには違和感があった。

 仕事への波及効果など一切考えず、ただただ好きだから野球を見る。好きだから、競馬場に行く。好きだから、ゲームをする。この“単に好きだから”という感覚が黒田には全くなかったという。

「全てを自分の芸に結び付けて考えていたんですね。料理にしても『こうやったらテレビで使えそうやな』と思ってやっていたり。それを辞めようと思うんです。無条件に何かに没頭する。それを50歳になって覚えようと。今思うとね、これまで常に仕事に結びつけて考えてきたのは、自分に自信がなかったんですよ。結局。自信がないから、常に武器として使えそうなものを探すんです。でも、自信があろうがなかろうが、もう50歳ですから。そない変わらん(笑)。だったら、もう別にエエわと。ただただ、好きだから。そういう純粋な趣味を持とうというのが今の素直な思いです」

 本業の漫才以外に、30歳過ぎから、約20年、芝居作りにもほぼ毎年あたってきた。来月からは主演も務める舞台「ボランチェア」も東京・神保町花月で上演される。漫才、テレビ、芝居。あらゆる形で日々笑いと向き合い続ける中で、否応なしに感じる変化もある。

 21歳でデビューした時、黒田が初めて作ったネタが暴走族のネタだった。相方のあいはら雅一と暴走族になり切ってのネタだったが、それが今できるかといったら、絶対にできないという。

「50のオッサンが『オレ、暴走族やってん』と言うことは、ネタにしても恥ずかしすぎるんです。お客さんも『この人ら何を言うてるんや』と引いてしまう。ただ、30年前やったら、50歳の僕らでもできたかもしれない。『ドリフターズ』さんの時代やったらOKやったと思います。オッサンが学生コントをやっていても、お客さんも納得して見てくれましたから。その頃は、テレビの向こう側とすごく距離があった。テレビに出ている人を実際に見るだけで腰を抜かすような。でも、今はリアリティーを求める時代になった。生々しさを求める感覚に応えているのがユーチューバーでもあるのでしょうし。笑いは流動的。なので、止まっているわけにはいかない。それは思い続けています」

 51歳、52歳と今後はどんな歳を重ねていくのか。

「漫才やテレビはともかく、芝居なんて、何にも儲からないし、何なら赤字ばっかり。でも、自分の中ではやっておかないといけない。そんな感覚なんです。頭が楽をしてしまうというか。そして、結婚して家に人がいる感覚にも慣れていかないと。ま、一つ間違いなくて、良かったなと思うのは、オレの方が(妻より)圧倒的にオッサンやから先に死ぬ。それが一番エエことです。奥さんが悲しまないかって?ま、オレがさびしがり屋なんでね。その方が気楽やし…。…なんや、えらいセンチメンタルなことになっとるがな!ナニ、言わしとんねん、アホ!」