要するにこの時代のお母さんたちは、わりとお暇だったわけです。右肩上がりの経済成長のもと、父親ひとりの稼ぎで一家は生活できる。しかも洗濯機や冷蔵庫、炊飯ジャーや掃除機など、家事を自動・省力化してくれる家電も普及してきました。

 子どもが学校に行っている空き時間、ひとりで家にいてもつまらない。だったら子どもの学校にでも集まって、ほかのお母さんたちとおしゃべりしたいわ、と考えたのかもしれません。

 でも、ただおしゃべりっていうのも気が引けるから、何か「学校のため」になるようなことをしながら、時間をつぶせたらいいんだけれど……。

 無駄に手間がかかるベルマーク活動は、そんな母親たちのニーズに、うまくフィットしたのかもしれません。

 しかし、あれから早60年。2019年現在、状況は天と地ほど異なります。子育て世代でも夫婦共働きはもはや当たり前ですし、ひとり親だって増えています。わざわざ有給休暇を取って、または家族との時間を削って捻出した時間をベルマークやPTA活動に使いたいと考えるお母さんは、いないわけではありませんが、決して多くはありません。

 PTAに「一人一役ノルマ」がある今、ベルマークは「働く忙しい母親が、家でもできる活動」として人気を集めていたりするわけですが、これはもう、完全な本末転倒です。

 みんなで学校に集まっておしゃべりをしたいお母さんたちにとってこそ、手間のかかるベルマーク活動はそれなりにメリットがあったのに……。時間に追われる母親が家で請け負うそれに、何のメリットがあるでしょうか。

 ただ、意外とこういう作業が好きな人もいるのは事実です。ですから「なくせ」とまでは言いませんが、せめて少なくとも、「やりたい人でやる」ことにできないものでしょうか。父親でも母親でもいいから。

 積極的に「やりたい」と思っている人以外を、どうか巻き込まないでくれ。それができないのなら、一刻も早くやめちまえ、と言いたいです。(文/大塚玲子)

●大塚玲子(おおつか・れいこ)/PTAや家族などをテーマに取材を続けるジャーナリスト。全国各地で行う講演会「PTAをけっこうラクにたのしくする方法」も好評。著書に『PTAがやっぱりコワい人のための本』など

●2コマでPTAを叫ぶ母/関西在住の主婦。子どもが通う学校でPTAの本部役員を引き受けた経験から、ブラックPTAを改革すべく自作マンガを日々ツイッター(@PTA_no_black)で発信中! ※内容は実体験に基づくフィクションです