けれど、みなさん、逆なんですね。レタッチをとにかく一生懸命にやって。劇的な色とか、劇的な光とか、大好き。どんどんエスカレートしていく。
最初は、「夕日はこんなふうに赤かったはずだよなぁ」と「記憶色」から始まるんですが、「こんなに夕日が赤かったらいいなぁ」と、自分の希望で色をつける「希望色」になっていく。画像データをどんどんいじっていく。で、最後はオリジナルの色が何だったのかわからなくなっちゃう。
例えば、日の出前や日没後の薄明の時間帯、ホワイトバランスを「太陽光」「晴天」に設定して撮ると、風景が青く染まってきれいなんですけれど、その微妙な青い光の味わいがよくわからない。何もしなくてもいい色が出ているのに、さらに色づけしちゃう。
赤いモミジもそう。雨が降っているときにPLフィルターをかけて写すと真っ赤っかになっちゃうんですよ。色が飽和してしまう。だから彩度を落とすことで自然な色にする。ところが、みなさん、「彩度を落とす」っていう調整はまったくしない。それどころか、プラスの方向にしか調整しない。
「その色は自然界にはない色だよ」と言っても、わからなくなってしまっている。
とにかく、みんな、調整用のスライダーを動かしすぎ。ちょっと色気がほしいときに、1とか2目盛り動かすならいいんだけれど、10とか20も動かしますから。
いわゆる「インスタ映え」する写真、彩度が高くて、ぱっと見きれいな「スマホがつくる色」がいいと思う人が多くなってしまった。とにかく、けばいのが大好き。料理と同じで、濃い味に慣れちゃったら、なかなか薄い味には戻れない。
■レタッチで入賞? それがいちばん?
それと、アマチュアの場合、「どう写真で表現するか」よりも、「どうしたらコンテストに入賞するか」を目標にしている人がけっこういて、「結果」がほしくて、ほしくて、しょうがないという人も多い。
フィルム時代は、自然風景の作品は技術と経験、勘、センスがある人しか撮れなかった。露出もすごく難しかったんですけれど、いまはレタッチひとつで後から簡単に変えられる。