フィルムだったら作品にならないようなメリハリのない光線状態でも、デジタルならレタッチでコントラストを上げればカリッとしたメリハリが出る。

 私が教えている生徒さんにもよく言うんだけど、「これ、フィルムだったら、絶対にシャッターを切らないよね」という条件でもデジタルだとそこそこなんとかなってしまう。

 極端な話、デジタルになってから難しいものが何ひとつなくなってしまった。フィルムの場合はできないことがあるけれど、デジタルには限界がない。

 だから、撮影現場で経験をつむ必要もないし、苦労もいらない。

 現場で楽してカッコいい写真が得られて、賞がもらえて、有名になれたら、それがいちばん、と思っている人がたくさんいる。

 写真を写すまでのプロセスとか、撮影現場をあまり重要視していない人がほとんどで、家でのモニター画面上の作業に重きを置いちゃっている。とりあえず写してきて、うまくレタッチをして、必要じゃないものが写っていたらうまく消して、足りなければ足せばいい、と。

 その極端な例が、星がぐるぐる回った日周運動を写した写真とホタルの写真。

 昔は星とホタルの撮影は、ほんとうに経験と技術がないとできなかった。ところがいまは初心者でも「コンポジット合成(比較明合成)」することで簡単に写せてしまう。コンポジット合成というのは、星やホタルとか、動きがあって明るいところだけをどんどん継ぎ足していく画像処理。

 デジタル一眼レフが登場したころは長時間露光すると背景の夜空に盛大にノイズが出てしまったのでコンポジット合成という技法が広まりましたけれど、いまは画質がよくなって、コンポジットに頼らなくても十分にきれいな写真が撮れる。

 この写真は個展で展示した桜と星の写真で、キヤノンEOS 5D MarkIII(2012年発売)で40分間露出して撮影したものですが、来場者はみんな、「コンポジットですね」と言う。バルブじゃ写らない、きれいな画質では写らないと思い込んでいる。でも、その当時からバルブによる長時間露光でも全紙に伸ばしても観賞に堪えるきれいな画質で撮れたわけですよ。

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「イメージ写真」は感動を生まない