大人は思いつかないような、子どもの素朴な疑問や不思議。子どもの頃から、納得できる答えが得られないままになっていること。そんな質問に、テレビやラジオなどでも活躍する明治大学教授の石川幹人(まさと)さんがお答えします。ジャンルを問わず、答えが見つからない質問をお寄せください!(https://publications.asahi.com/kodomo_gimon/)。採用された方には、本連載にて石川幹人さんが、どこまでもまじめに、おこたえします(撮影/写真部・掛祥葉子)
大人は思いつかないような、子どもの素朴な疑問や不思議。子どもの頃から、納得できる答えが得られないままになっていること。そんな質問に、テレビやラジオなどでも活躍する明治大学教授の石川幹人(まさと)さんがお答えします。ジャンルを問わず、答えが見つからない質問をお寄せください!(https://publications.asahi.com/kodomo_gimon/)。採用された方には、本連載にて石川幹人さんが、どこまでもまじめに、おこたえします(撮影/写真部・掛祥葉子)

※写真はイメージです (c)朝日新聞社
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「人間は進化したら何になるの?」
「どうして、“わたし”は“わたし”なの?」

 発想豊かな子どもの疑問に大学教授が本気で答える連載「子どもの素朴な疑問に学者が本気で答えます」。子どもに聞かれて答えられなかった疑問でも、幼い頃からずっと疑問に思っていることでも、何でもぜひお寄せください。明治大学教授の石川幹人さんが、答えてくれますよ。第2回の質問は「なぜ人間は鳥のように飛べないのですか?」です。

*  *  *

【Q】なぜ人間は鳥のように飛べないのですか?

【A】人類は飛ぶことを選択しなかったから「飛べない体」になっている

 浜辺をおだやかに飛ぶカモメを見ると、私も「鳥のように飛べたらなぁ」と思います。しかし、鳥も「天敵から逃げるために苦労して飛んでいるらしい」と知ると、「あぁ、苦労の結果、楽しい時を過ごせているのだなぁ」と見方も変わってきます。飛ばないですむなら、そのほうが楽なのです。その証拠に、天敵がいない島では、飛ばない鳥が多数見つかっています。ニュージーランドのキーウィやカカポ、沖縄のヤンバルクイナが典型例です。

 飛ぶことはどの程度たいへんなのでしょうか。ここでひとつクイズです。

 鳥かご全体を、精密に重さがはかれる体重計にのせました。鳥かごの中には小鳥が数羽飼われていて、それらの小鳥が枝から枝へと飛び回っています。さて、小鳥が空中を飛んでいるときに、体重計が示す重さは小鳥の体重分だけ軽くなるのでしょうか?

 答えは「重さは変わらない」です。確かに、飛び上がるときや着地するときに少し重くなり、小鳥が自由落下しているときには少し軽くなるのですが、羽ばたいているときは基本変わりません。なぜなら、羽ばたいているときの小鳥の体重は空気を介して鳥かごが支えているからです。上空のヘリコプターのすぐ下では、上から強い風が吹き下ろしているのを知っていますか。それは、ヘリコプターの重さを空気が、そして地面が支えているからです。

 つまり、鳥は一生懸命に羽ばたいて体重を支えないと飛べないのです。そのため、鳥は体重を軽くする方法をいろいろ編み出しています。たとえば、骨の中に空洞を作ることによって骨を軽くしています。人間では体重の20%ほどが骨ですが、鳥ではほんの5%程度です。また、鳥はやたらに食べて太ることがないように進化しています。太ったら飛べなくなってしまうからです。げんに最大の鳥であるダチョウは、体重が100キロ以上になりますが、飛べずに走るだけです。

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石川幹人

石川幹人

石川幹人(いしかわ・まさと)/明治大学情報コミュニケーション学部教授、博士(工学)。東京工業大学理学部応用物理学科卒。パナソニックで映像情報システムの設計開発を手掛け、新世代コンピュータ技術開発機構で人工知能研究に従事。専門は認知情報論及び科学基礎論。2013年に国際生命情報科学会賞、15年に科学技術社会論学会実践賞などを受賞。「嵐のワクワク学校」などのイベント講師、『サイエンスZERO』(NHK)、『たけしのTVタックル』(テレビ朝日)ほか数多くのテレビやラジオ番組に出演。著書多数

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