昨シーズンの西武は、多和田真三郎・菊池・榎田大樹・カスティーヨの4人で48勝を挙げている。今シーズンはニール・高橋光成・今井達也・松本航・本田圭佑・十亀剣の6人で46勝だった。チームの勝ち頭がガラリと入れ替わっていることがわかる。

 西武独自の大胆な戦略も功を奏したという。

「『強みで勝つ野球』が見事にはまっています。山川穂高選手や、中村剛也選手には自慢の長打力で本塁打を求める一方、苦手とする走塁に目をつむり起用しています。通常、彼らのような大柄な選手をスタメンに2人も置くことはあまりありません。一方で、金子侑司選手や源田壮亮選手に長打力はありませんが、盗塁はできる」

 23日時点で、山川は42本、中村は30本の本塁打を放っている。盗塁は金子が41、源田は30だ。球団トータルでみると、本塁打こそ福岡ソフトバンクホークスに次いで2位(172本)だが、得点(743)、盗塁(133)、打率(.266)はいずれも12球団トップ。さらに圧巻なのは、打撃の個人タイトルで首位打者・本塁打・打点・安打・盗塁を西武の選手が独占していることだ。

「組織全体で目標を達成することが大事なのです。弱点に注目されると人は萎縮しますが、強みに期待してあげると、のびのびと行動できる。そこで活躍すれば自信を得て、組織のなかに居場所を見つけることができる。高いモチベーションが維持できるので、企業の若手育成には最適なやり方です。弱点の克服は、その後でよいのです」

 一方、広島が苦戦したのは、昨年引退したあのベテランの影響が大きいという。

「新井選手がいなくなったことが大きいと思います。実績があるベテラン選手は、企業で言えば部長や課長といった中間管理職。彼らには監督(経営者)の方針を若手や中堅に伝え、一方で現場の意見や不満を吸い上げてうえに伝える役割が期待されます。できれば生え抜きで、誰からも慕われていて、経営者ともパイプがある。そんな人がいる企業は、人が辞めないんです。彼がいなくなったことで、その役目を果たす人がいなくなってしまった。精神的な支えを失ったことは大きい」

 ソフトバンクには内川聖一、ジャイアンツには阿部慎之助がいる。西武でいえば栗山巧がこれにあたるだろう。

 セ・パ両リーグはこれから、日本シリーズをかけたクライマックスシリーズ(CS)に突入する。

「パルテノン型組織は変化や長期戦には強いのですが、短期戦には弱点があります。例えば、元楽天田中将大投手(現ヤンキース)のような絶対的なエースがいれば、それだけで1勝が計算できますよね。逆に絶対的な選手がいないチームは計算できない。日本シリーズにどこが進出するのか、予測するのは難しいですね」

 昨年のCSでは、ソフトバンクに敗れて涙をのんだ西武。今年は雪辱を果たすのか、注目したい。(AERA dot.編集部/井上啓太)