特に受験生に関して、私はそうした声をたくさん聞いてきました。受かるかどうか不安な時期に、「○○大学に入れるくらいにはなれ」と言われたら、子どもはその言葉をひどく重く感じることでしょう。

 親の期待に応えようとしすぎるあまり、「○○大学に落ちてはいけないのだ」と精神不安定になり、「受験すること自体が怖くてできない」という状態になってしまった子もいました。親が、子どもと他人の「穴を埋めよう」と思ってかけた言葉でも、結果、追い詰めてしまうことにつながり、子どもが行動できないようになることもあるのです。

 きっと親は、コンプレックスを抱えた子どもに対し、「基本的に何もしなくていい」のだと思います。穴があることこそが、成長につながるきっかけなのです。そして、子どもが穴を埋めるためにがんばって行動していたら、それをほめて、やる気を高めてあげるのがベストではないでしょうか。

 子どもの運動ができないことに対して、「どうしてできないのか」と親が嘆いたところで、何の生産性もありません。前述したとおり、「運動ができるようになりなさい」と強要すれば、逆効果になることが多いです。

 そうではなく、練習をがんばりだした子どもに対して「努力して偉い」と言葉をかけたり、さりげなく運動する機会をつくってあげたりすることで、子どもはぐっと成長するのだと思います。もちろん、「困っている」と相談されたときは、一緒に解決の糸口を探してあげるべきでしょう。ただ、「干渉し、口出しをしすぎるとかえって成長の邪魔になる」というのが、私の出した結論です。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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