大人は思いつかないような、子どもの素朴な疑問や不思議。子どもの頃から、納得できる答えが得られないままになっていること。そんな質問に、テレビやラジオなどでも活躍する明治大学教授の石川幹人(まさと)さんがお答えします。ジャンルを問わず、答えが見つからない質問をお寄せください!(https://publications.asahi.com/kodomo_gimon/)。採用された方には、本連載にて石川幹人さんが、どこまでもまじめに、おこたえします(撮影/写真部・掛祥葉子)
大人は思いつかないような、子どもの素朴な疑問や不思議。子どもの頃から、納得できる答えが得られないままになっていること。そんな質問に、テレビやラジオなどでも活躍する明治大学教授の石川幹人(まさと)さんがお答えします。ジャンルを問わず、答えが見つからない質問をお寄せください!(https://publications.asahi.com/kodomo_gimon/)。採用された方には、本連載にて石川幹人さんが、どこまでもまじめに、おこたえします(撮影/写真部・掛祥葉子)

「うんこ」を食べられる日が来るかも…(写真:123RF)
「うんこ」を食べられる日が来るかも…(写真:123RF)

「人間は進化したら何になるの?」
「どうして、“わたし”は“わたし”なの?」

 発想豊かな子どもの疑問に大学教授が本気で答える連載「子どもの素朴な疑問に学者が本気で答えます」。子どもに聞かれて答えられなかった疑問でも、幼い頃からずっと疑問に思っていることでも、何でもぜひお寄せください。明治大学教授の石川幹人さんが、答えてくれますよ。第1回の質問は「うんこは食べられますか?」です。

*  *  *

【Q】うんこは食べられますか?

【A】うんこには、まだ栄養が残っているので、食べるのも一案

 じっさい、100年ほど前までは「肥溜め」といって人間の糞尿を穴にためておいて、それを畑にまいて肥料にしていました。糞尿は、良い作物を育てるための貴重な栄養源だったのです。むかし私は、畑の脇を抜けて小学校に通いましたが、小学校に着くまでに肥溜めがいくつもあり、近づくと、あの何とも言えない「うんこのにおい」がしました。

 でもうんこを肥料にするのは、衛生面で大きな問題があります。確かに肥料の効果はあるものの、うんこのなかには寄生虫や病原体がいることもあるのです。人間は有害なものを、残った食べ物とともに体から出そうとするため、うんこに寄生虫や病原体が混じるのです。それを畑にまくと、収穫した野菜などに寄生虫の卵などが付着して、また人の口に入り、寄生虫の蔓延をまねきます。うんこが「くさい」と感じるのは、そうした危険なものを本能的に遠ざけるように人間ができているからです。

 糞尿を肥料に使っていた時代、コレラや赤痢などの伝染病が流行し、大勢の人が亡くなりましたが、それらはうんこを介して感染しています。ノロウイルスもそうです。トイレに入ったらかならず手を洗え、というのはこのためなのです。なお、化学肥料が普及したのち肥溜めは少なくなったため、世界の衛生状態は飛躍的に改善しました。

 つまり、うんこを食べるには、寄生虫や病原菌などの問題に対処しないとなりません。そういった寄生虫や菌を撲滅する方法はないのでしょうか? じつは宇宙探検について研究しているNASA(アメリカ航空宇宙局)を中心に、うんこを食べようとする研究が進んでいます。米ペンシルベニア州立大学のクリストファー・ハウス教授によれば、うんこを食糧にできる可能性があるそうです(参考:「ペンシルベニア州立大学ニュースリリース2018.1.25」)。

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石川幹人

石川幹人

石川幹人(いしかわ・まさと)/明治大学情報コミュニケーション学部教授、博士(工学)。東京工業大学理学部応用物理学科卒。パナソニックで映像情報システムの設計開発を手掛け、新世代コンピュータ技術開発機構で人工知能研究に従事。専門は認知情報論及び科学基礎論。2013年に国際生命情報科学会賞、15年に科学技術社会論学会実践賞などを受賞。「嵐のワクワク学校」などのイベント講師、『サイエンスZERO』(NHK)、『たけしのTVタックル』(テレビ朝日)ほか数多くのテレビやラジオ番組に出演。著書多数

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うんこを食糧に転換する方法とは?