一方、ゲームやテレビ、パソコンの利用時間とうつ症状の関連は、ソーシャルメディアほどははっきりしませんでした。例えば、テレビは4年間の平均視聴時間が長い人ほどうつ症状はやや少ない傾向にありましたが、一人の人について考えると、視聴時間が増えるほどうつ症状はやや増える傾向でした。

 パソコンの利用は、4年間の平均利用時間が長いほどうつ症状は多い傾向にありましたが、ある人の利用時間が増えてもうつ症状の関連はありませんでした。また、ゲーム時間とうつ症状の関連は見られませんでした。さらに、子どもたちの運動時間や自尊心のレベルとうつ症状の関係も調査されています。その結果、運動時間とうつ症状は明らかな関連が見られませんでしたが、自尊心が低いとうつ症状のスコアも悪くなることがわかりました。

 メディアがなぜ子どもに悪影響を与えるのか、この研究では3つの仮説を立てています。1つは、利用時間が長くなることによって、運動や他の活動の時間が減ってしまうこと。2つ目は、タレントや友人などの良い面だけを切り取った発信を見て、自分と比較してしまうこと。3つ目は、自分の見たい情報・自分の考えと一致する情報にしか触れなくなることで、誤った考え方が強化されてしまうことです。

 ソーシャルメディアの影響が大きかったことや、運動時間ではなく自尊心がうつ症状との関連が見られたことなどから、この研究では、2つ目と3つ目の仮説が有力ではないかと結論付けられています。つまり、ゲームを行うことは(学業成績等への影響はあるかもしれませんが)子どもの精神面に悪影響を与えるとは言えない、と考えることができます。

 よく考えてみると、これはほとんど大人でも同じことです。SNS疲れを癒やすため、SNSを見ている時間を減らしたり、「デジタルデトックス」したりしている方もいらっしゃるでしょう。

 メディアは、それを使って何をするかが大切です。子どもの成長に合わせて、ソーシャルメディアとの上手な距離のとり方や、現実世界との違いも、親子で一緒に考えていきたいと思います。

(※1)Boers E, Afzali MH, Newton N, Conrod P. Association of Screen Time and Depression in Adolescence. JAMA Pediatr. 2019.

◯森田麻里子(もりた・まりこ)
1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

暮らしとモノ班 for promotion
大人のリカちゃん遊び「リカ活」が人気!ついにポージング自由自在なモデルも