観客の声援に応えるフェラーリのシューマッハーと、後方のバリチェロ (c)朝日新聞社
観客の声援に応えるフェラーリのシューマッハーと、後方のバリチェロ (c)朝日新聞社

 モータースポーツ、とりわけその頂点に立つF1でしばしば問題となるのが「チームオーダー」だ。今年も第3戦中国GPでフェラーリがチームオーダーを発令するも、ドライバーが納得するまで時間を要して作戦が機能しなかっただけでなく、レース後のチーム内の雰囲気にも悪影響を及ぼす結果となった。

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 チームオーダーとは、文字通り「チームによる指令」のことで、モータースポーツでは古くから採用されてきた伝統的な作戦である。

 例えば、1チーム2人のドライバーのうち、どちらかがチャンピオンシップでタイトル争いを他チームのドライバーと繰り広げている場合、タイトル争いを演じているドライバーの順位を優先して順位を入れ替えたり、あるいは無用なチームメート同士のバトルを避けるような指令がチームオーダーとして出される。

 ドライバーが乗るマシンはチームが製造し、ピットストップ作業などもチームに所属するメカニックによって行われるという意味ではF1はチームスポーツという概念があるものの、レースは最も早くチェッカーフラッグを受けた者が勝者となる個人競技という基本的な理念がある。そのため、過度なチームオーダーはチーム内での軋轢を生んだり、世間からバッシングを受ける結果を招く。

 その中で近年のF1で大きな議論を呼んだのが、2002年と2010年のフェラーリが行なったチームオーダーだ。

 2002年のチームオーダーは、第6戦オーストリアGPで出された。トップを快走していたルーベンス・バリチェロに対して、チームから2番手を走るミハエル・シューマッハーにポジションを譲るよう指令が出される。バリチェロは最後まで抵抗し、最終的に同意したものの、ファイナルラップの最終コーナーを立ち上がったフィニッシュライン手前でポジションの入れ替えを行うことでチームへの無言の抗議を見せた。そのため、表彰式はスタンドから大ブーイングが起き、世間からも痛烈な批判が浴びせられた。

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チームオーダーをしなくても批判が…