井上は2回戦の岩ケ崎戦でも7回から3番手でリリーフし、2イニングをパーフェクトの8回コールド勝ち。3回からリリーフした3回戦の中新田戦では、2人目の打者に死球を与えたものの、7イニングを被安打4でゼロ封。そして、4回戦の石巻商戦で3試合ぶりに先発したが、8回、26イニング目に大会初失点を許し、0対1と惜敗した。
5回コールドの参考記録ながら、打者15人をオール三振に切って取る快挙で完全試合を達成したのが、根室の橘啓介だ。
93年の北北海道大会釧根地区Aブロック2回戦の厚岸水産戦、公式戦初先発を果たした背番号19の2年生は、184センチの長身を利した速球を武器に、初回を3者連続三振に抑えると、「投げているうちに段々良くなった」とエンジン全開に。コントロールも決まり、2、3、4回と打者9人をいずれも三振に打ち取り、5回の先頭打者も三振。ここで初めて「ノーヒットノーランを意識した」という。
これが力みとなり、14人目の打者となった代打に対し、初球から3球続けてボールと苦しくなるが、開き直って「とにかく真ん中に投げた」のが功を奏し、三振に打ち取った。
そして5回2死、最後の打者を空振り三振に仕留め、全員三振のパーフェクトを達成。74球中ファウルはわずか5本。うち前に飛んだのは、一塁方向への1本だけと球威で圧倒した。
前年地区代表決定戦で敗れた雪辱を期す同校は、次の釧路東戦では、後輩の快挙に「僕もぶざまな投球はできない」と奮起した3年生エース・木根崇臣が力投。2年連続代表決定戦に駒を進めたが、残念ながら橘の出番がないまま、釧路緑岡に2対4で敗れた。
プロ野球でも、メジャーでも達成されていない延長14回ノーヒットノーランという、とてつもない快記録が生まれたのが、05年の鹿児島県大会2回戦、出水中央vs中種子。
出水中央の右下手投げ、林真司は初回、1、2番打者を連続三振に切って取り、2回も4、6番を三振と好調な立ち上がり。3回1死から死球で初めての走者を許し、送りバントで2死二塁のピンチも、落ち着いた投球で次打者を三振に打ち取った。その後、4回にエラー、5回に四球の走者を出したが、いずれも後続をピシャリと抑え、6~9回はいずれも3者凡退。普通なら、この時点でノーヒットノーラン達成である。